2025.01.09 コラム

野菜流通の課題と解決策:物流コストと働き方改革の影響

野菜流通における物流コストは、近年さまざまな要因で増加しています。燃料価格の高騰、トラック運賃の上昇、そしてドライバー不足が主な要因です。特に農産物輸送は、小ロット・多頻度・長距離輸送が多く、効率化が難しいという特性があります。

さらに、2024年4月から施行された働き方改革関連法により、トラックドライバーの時間外労働が年間960時間に制限される「2024年問題」が物流業界全体に大きな影響を与えています。この規制により、輸送能力の低下やコストのさらなる上昇が懸念されています。

また、農産物は鮮度が重要であるため、迅速な輸送が求められますが、長距離輸送ではドライバーの拘束時間が長くなる傾向があり、これがさらなる課題となっています。

働き方改革の影響

働き方改革は、物流業界に以下のような影響を及ぼしています。

  • 輸送能力の低下:ドライバーの労働時間制限により、輸送可能な荷物量が減少。特に農産物輸送では、長距離輸送が多いため影響が大きい。
  • 物流コストの上昇:ドライバー不足に伴う賃金上昇や、輸送効率の低下がコスト増加を招いています。
  • サービスの低下:配送遅延や一部地域への配送制限など、消費者へのサービスにも影響が出ています。

解決策と取り組み

これらの課題に対処するため、以下のような解決策が提案されています。

共同配送の推進

複数の生産者や業者が協力して配送を行う「共同配送」は、トラックの積載率を向上させ、物流コストを削減する有効な手段です。これにより、ドライバー不足の影響を軽減し、効率的な輸送が可能となります。

モーダルシフトの活用

トラック輸送から鉄道や船舶への切り替え(モーダルシフト)は、長距離輸送における効率化を図る方法です。特に、冷蔵コンテナの活用により、鮮度を保ちながら大量輸送が可能となります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入

輸送ルートの最適化や需要予測にAIを活用することで、効率的な物流を実現します。例えば、輸配送管理システム(TMS)やGPSトラッカーを活用することで、輸送の可視化と効率化が進められています。

中継輸送の導入

長距離輸送を複数のドライバーで分担する中継輸送は、ドライバーの拘束時間を短縮し、働き方改革に対応する方法として注目されています。

鮮度保持技術の向上

輸送中の温度・湿度管理や鮮度保持袋の活用により、農産物の品質を維持しながら輸送効率を高める取り組みが進んでいます。

地産地消の推進

地域内での消費を促進することで、輸送距離を短縮し、物流コストを削減する取り組みも有効です。直売所や道の駅を活用した地場流通モデルがその一例です。

今後の展望

物流コストの増加や働き方改革の影響は、野菜流通における構造的な課題を浮き彫りにしています。しかし、共同配送やモーダルシフト、DXの導入など、多角的なアプローチにより、効率的で持続可能な物流システムの構築が期待されています。

これらの取り組みを通じて、農産物の安定供給と消費者へのサービス向上を両立させることが、今後の野菜流通の鍵となるでしょう。