2025.10.17 流通

規格外野菜が変える市場のしくみ

スーパーに並ぶ野菜は、まっすぐなきゅうり、均等な大きさの玉ねぎ、艶やかなトマト。
でも、実際の畑で収穫される野菜は、そんなに整っていません。

形がいびつだったり、大きすぎたり、小さすぎたり――
こうした「規格外野菜」はこれまで、市場流通に乗らずに廃棄されたり、加工用や飼料用に回されることが多くありました。

ところが今、その“規格外”が 市場のしくみを静かに変え始めています

🧑‍🌾 そもそも「規格外野菜」って何?

野菜には、等級やサイズなどの「規格」が存在します。
これは流通・販売の効率化のために整備された仕組みで、

  • サイズ(大・中・小)
  • 形の整い具合
  • 傷の有無

などによって仕分けされます。

たとえば、スーパーの棚に並ぶのは「規格内(正品)」の野菜。
見た目が少し曲がっていたり、大きさが規格と合わないものは「規格外」とされるのです。

👉 味や栄養はまったく同じでも、市場価値は“ゼロ”になることもあります。

📉 規格外野菜が生まれる背景

規格外野菜は、生産者の手抜きではなく、自然が相手の農業では避けられないものです。

  • 雨が多くて実が肥大化
  • 日照不足で成長がばらつく
  • 台風で形が崩れる

こうした環境要因によって、規格外は一定の割合で必ず発生します。
その量は、作物によっては全収穫量の2〜3割に及ぶこともあります。

これまで、この“見た目の違い”が価値を生まないまま捨てられていたのです。

🛍 「規格外=安くておいしい」が広がる

近年、この状況を逆手にとる動きが広がっています。

  • 直売所で「規格外」と明記してお得に販売
  • 飲食店が「訳あり野菜」を積極的に活用
  • オンラインで“おまかせ野菜BOX”として販売

「規格外だから安い、でも味は変わらない」という価値が浸透し、
消費者にとっても“賢い選択肢”となりつつあります。

とくにSNSの普及により、見た目が少し違う野菜も「かわいい」「個性的」とポジティブに受け止められるようになりました。

🌍 規格外活用がもたらす“構造変化”

規格外野菜の活用は、単なる“節約”では終わりません。
市場全体の構造にも影響を与えています。

  • 🧑‍🌾 生産者の収益多角化
    → これまで捨てていた分が収入源に。
  • 🏬 流通の多様化
    → スーパー以外の販路(直売所・ネット・飲食)が強化。
  • 🪴 フードロス削減
    → 廃棄コストが減り、環境負荷の軽減にも貢献。

つまり規格外野菜は、無駄ではなく資源として再評価され始めているのです。

🚀 新しい市場のプレイヤーも登場

この流れを追い風に、

  • 規格外野菜の専門ECサイト
  • 飲食店と農家をつなぐマッチングサービス
  • フードロス削減を掲げる企業

といった 新しいビジネスモデルも続々と登場しています。

規格に縛られない新しいマーケットが、これからの農業・流通を支える大きな柱になる可能性もあります。

まとめ ― “欠点”が“個性”になる時代へ

まっすぐなきゅうりも、少し曲がったきゅうりも、
野菜の本質は変わりません。

規格外野菜が持つのは、「欠点」ではなく「多様性」。
その多様性が、これからの市場をより柔軟に、持続可能な形へと変えていく力を秘めています。

“もったいない”が“新しい価値”になる――
そんな未来は、すでに始まっています。