2025.12.10 流通

コールドチェーンの基本:温度帯が1℃ズレると何が起きるか

冷蔵トラックや冷蔵庫の設定温度が「たった1℃」ズレただけで、品質や安全性に影響が出ることがあります。コールドチェーン(低温流通)は“冷やすこと”そのものよりも、「温度を外さない状態を途切れさせないこと」が本質です。この記事では、1℃のズレが現場で何を引き起こしやすいのかを、できるだけ実務目線で整理します。

コールドチェーンとは何か

コールドチェーンとは、生産・加工・保管・輸送・販売(そして場合によっては家庭に届くまで)の各工程で、温度管理を連続して保つ仕組みのことです。ポイントは「一度でも温度が外れると、その後に再び冷やしても“外れた時間分の劣化”は戻らない」点にあります。

また、よくある勘違いとして「設定温度(機械の表示)=商品の温度」ではありません。実際に守るべきなのは、商品(芯温)と周辺空気温度の両方です。ここがズレていると、“ちゃんと冷やしているつもり”でも品質事故が起きます。

温度が1℃ズレると起きやすいこと

1℃のズレは、単体では小さく見えますが「時間×回数」で効いてきます。特に、以下の4つが起きやすくなります。

  • 品質劣化の加速(鮮度・食感・香り)
    野菜や果物は収穫後も呼吸を続けます。温度が上がるほど呼吸が進み、しおれ・軟化・変色・香り抜けが起きやすくなります。
  • 微生物リスクの上昇(腐敗・食中毒リスク)
    多くの微生物は温度が上がるほど増えやすくなります。1℃の差でも、「許容ラインまでの残り時間」を削っていくイメージです。
  • 結露・乾燥によるトラブル(見た目・カビ・破損)
    温度が上下すると結露が発生しやすく、包装内の水滴やラベル剥がれ、カビの温床になります。逆に乾燥が進むと、葉物の萎れや重量ロスにつながります。
  • 温度ショック(冷やし直しのダメージ)
    上がった温度を後から急冷しても、細胞や組織が受けたダメージは残ります。結果として「店頭で急に傷む」「開封したら劣化が早い」が起きやすくなります。

品目別:1℃のズレが目立ちやすい例

以下は、現場で“差が出やすい”代表例です(目安のため、最終的には各商品の仕様・取引条件を優先してください)。

品目の例ズレが効きやすい理由現場で見える症状
葉物(レタス、ほうれん草等)乾燥・呼吸の影響を受けやすいしおれ、葉先の変色、重量ロス
ベリー類・カットフルーツ微生物・結露の影響が出やすい汁漏れ、カビ、異臭、見た目劣化
精肉・惣菜安全性(菌増殖)の余裕が小さい変色、ドリップ増、期限前の品質低下
乳製品温度変動で風味・分離が起きやすい風味の劣化、分離、クレーム増

温度がズレる“典型ポイント”はどこか

コールドチェーンの温度ズレは、意外と「輸送中」よりも、その前後で起きます。よくあるポイントを押さえるだけでも改善が進みます。

  • 予冷不足(入庫時点で商品が温かい)
    庫内は冷えていても、商品が冷えていないと、庫内が“商品に負けて”温度が上がります。
  • 積み込み・積み付け(冷気の通り道が塞がれる)
    隙間ゼロの積み方や、吹き出し口を塞ぐ配置は、局所的な温度ムラを作ります。
  • ドア開閉・検品待ち(短時間でも回数が増える)
    「1回は短い」が積み重なると、結露・温度ムラの原因になります。
  • 庫内の“設定温度”だけで安心する(実温度を見ていない)
    表示温度が守れていても、荷室内の場所や商品の芯温は別物になりがちです。
  • ラストワンマイル(店舗・現場の一時置き)
    搬入口での滞留、バックヤードの置き場、陳列前の待ちが“穴”になりやすいです。

すぐ効く対策:まずは“可視化”から

温度は「守れているつもり」になりやすい領域です。改善の最短ルートは、原因探しより先に「実温度を見える化」することです。

  • 温度ロガー(簡易でも可)を入れる
    最低でも「出荷時」「到着時」「店舗受け渡し時」など節目の温度を押さえるだけで、ズレる場所が見えてきます。
  • “設定温度”と“実温度(荷室)”と“芯温”を分けて記録する
    問題が起きたときの切り分けが一気に楽になります。
  • 予冷を工程として固定する
    忙しい日に省略されがちな工程ほど、ルール化すると効果が出ます。
  • 積み付けルールを簡単に決める(吹き出し口・回風の確保)
    「このラインより上は積まない」「この面は塞がない」など、現場が迷わない基準が重要です。
  • ドア開閉の回数と時間を減らす段取りにする
    検品の場所、ピッキングの順番、置き場の導線を見直すだけでも変わります。

まとめ:1℃は“誤差”ではなく“設計値”です

コールドチェーンは、どこか1つの工程だけ頑張っても成立しません。1℃のズレは小さく見えますが、時間・回数・温度ムラ・結露を通じて、品質と安全性に効いてきます。

まずは「実温度の可視化」→「ズレるポイントの特定」→「予冷・積み付け・開閉回数の改善」の順番で進めると、少ない投資でも効果が出やすいです。温度管理はコストではなく、クレーム削減と廃棄ロス削減に直結する“利益の守り”になります。