毎年春、スーパーに並ぶ「新玉ねぎ」。みずみずしく甘いその味は、春の食卓に欠かせない存在です。ところが、2025年の今、この新玉ねぎが“高嶺の花”となりつつあります。背景には、私たちが見落としがちな「気候変動」の影が潜んでいます。
不安定な天候がもたらした“異常”
新玉ねぎは通常、11月〜12月に植え付けられ、3月から5月にかけて収穫されます。しかし、今年は冬の気温の高さと春の降雨量の少なさにより、生育が大きく乱れました。
農林水産省の最新レポートによれば、2025年の新玉ねぎは収穫量が前年比で約12%減少。特に鹿児島や佐賀といった主産地では「小ぶりで傷みやすい玉ねぎが増えた」と生産者の声も上がっています。
高騰の波は消費者へ
当然、この影響は市場価格に反映されます。
4月末時点での東京都中央卸売市場では、新玉ねぎの平均価格が例年比で約1.5倍に跳ね上がりました。1袋298円だったものが、398円〜498円になるケースも珍しくありません。
さらに、輸入玉ねぎの供給にも限界があり、インドや中国でも気候の影響で供給不安が続いています。こうした中で、「新玉ねぎくらい贅沢品になるとは」と嘆く声がSNS上でも多く見られます。
気候変動が“旬の感覚”を壊していく
このような事態は、単に「価格が上がった」という話にとどまりません。
「季節の味」として楽しまれてきた食材が、いつの間にか“手に入りにくい特別なもの”になりつつあることに、私たちは気づかねばなりません。
近年、日本では1.5℃前後の平均気温上昇が観測されており、それは作物の開花時期、収穫タイミング、病害虫の発生頻度にまで影響を及ぼしています。
つまり、新玉ねぎの高騰は一過性の問題ではなく、**「気候変動が食卓に忍び寄っているサイン」**とも言えるのです。
消費者にできる“小さな選択”
では、私たちに何ができるのでしょうか?
大量生産・大量消費の流れを変えるには、日々の“選択”が鍵になります。
- 地元産の旬野菜を選ぶ「地産地消」
- 小規模農家や直売所から購入し、生産の背景に目を向ける
- 傷やサイズが不揃いでも食べる「フードロス削減」
こうした行動の積み重ねが、気候変動に強い持続可能な農業や流通を支える第一歩になります。
最後に——“旬の味”を守るために
新玉ねぎの甘さに春の訪れを感じた日々。
その当たり前が少しずつ揺らいでいる今、私たちの「食との向き合い方」も問われています。
日々の買い物や料理の中に、ほんの少しだけ気候や農業への関心を添えること。
それが、これからも「旬の味」を楽しむために私たちにできる、小さくて確かな一歩なのかもしれません。