2025年の夏、日本各地で観測史上最高気温を更新する日が続いています。記録的な猛暑に加え、梅雨時期の極端な豪雨や長引く日照不足が農作物に大きな影響を与えています。
なかでも影響が顕著なのが「トマト」。スーパーでは例年より小ぶりで色づきの悪いトマトが並び、価格も例年の1.3〜1.5倍に上昇しています。
こうした異常気象は、ただの一時的な天候不順では済まされません。気候変動が本格的に“私たちの食卓”へ影響を及ぼし始めている兆候とも言えるのです。
今回は、2025年夏の気象状況が夏野菜、とくにトマトに与えている影響について見ていきます。
トマトにとって“暑すぎる夏”とは
トマトは暑さに強い野菜と思われがちですが、実は高温多湿には非常に弱い作物です。
開花期に35℃以上が続くと受粉がうまくいかず、実がつきにくくなります。
また、夜間の気温が下がらないと、実が赤く色づかず、生育不良になりやすい特徴もあります。
2025年の夏は、日中35〜38℃の猛暑が長く続き、夜間も25℃以上の熱帯夜が連日記録されました。これにより、トマトの果実が肥大しない、赤くならない、収量が減るといった被害が広がりました。
日照と降水のバランス崩壊
加えて、今年の梅雨は例年より1週間以上早く始まり、日照不足と断続的な豪雨が続きました。
トマトのような果菜類は日光をたっぷり浴びて育つため、日照不足はそのまま品質低下や病害の増加につながります。
雨が多いことで湿度が上がり、病気(うどんこ病・疫病)や裂果のリスクも増加。
農家の中には、「1回の大雨でハウスが水没した」という声や、「実の半分が裂けてしまい、出荷できなかった」といった報告も出ています。
価格上昇はトマトだけではない
こうした生育不良により、トマトの出荷量は全国的に減少傾向に。
結果として、市場価格が高騰し、消費者が「高くて手が出ない」と感じる事態に発展しています。
また、トマトだけでなく、同様に高温や日照不足の影響を受けやすい以下の野菜にも影響が出ています:
- ピーマン:高温で果実が変形、苦味が強くなる
- ナス:夜間気温が高すぎると果肉がスカスカに
- キュウリ:高温ストレスでイボが減少し、見た目が悪くなる
これにより、「夏野菜が高い・品質が不安定」という声が消費者から相次いでいます。
生産者の努力と限界
農家はこうした気候リスクに対応するために、以下のような努力を行っています:
- ハウス内の遮熱カーテン・自動換気装置の導入
- 灌水(かんすい)タイミングの工夫で根腐れ防止
- 耐暑性のある品種への切り替え
しかし、こうした対策には設備投資や経験、労力が必要で、すべての農家が対応できるわけではありません。
特に中小規模の農家にとっては、今年のような夏は経営に直結する大打撃です。
私たちができる選択とは
消費者としても、気候変動が野菜に及ぼす影響を「高い・不便」で終わらせず、背景を知ることが求められています。
たとえば:
- 少し形が悪くても購入する
- 地元産の露地栽培野菜を選ぶ
- 規格外野菜を扱うECやマルシェを活用する
といった選択が、農家の支援にもつながります。
まとめ:気候変動が“味”を変える時代に
これまで「旬の野菜=美味しくて安い」が当たり前でした。
しかし、気候変動が本格化する中で、その常識は大きく揺らぎ始めています。
今後も猛暑や豪雨が常態化するならば、「季節の味」そのものが変わってしまうかもしれません。
トマトの不作は、私たちの食卓が気候と直結していることを改めて示す“警告”とも言えるのではないでしょうか。