2025.05.22 コラム

学校給食から消える夏野菜。少子化時代の“給食改革”とは?

夏の定番メニュー、冷やしトマトやきゅうりの浅漬け。子どもたちの給食にも、そんな夏野菜の彩りは当たり前のように登場してきました。
しかし近年、こうした旬の野菜をふんだんに使った献立が、学校給食の現場から静かに減っているのをご存じでしょうか?

背景には、少子化による学校の統廃合、人手不足、そして物価高といった複数の問題が絡み合っています。
「地元野菜を食育に生かす」という理想とは裏腹に、現場では「扱いやすい・保存しやすい・コストが安定している」冷凍食材や業務用加工品への依存が進行中。
給食が単なる“栄養補給の手段”へと変わりつつある今、私たちは何を見過ごしているのでしょうか?

給食現場が抱える変化と課題

少子化によって1校あたりの児童数が減り、給食センターの統廃合や外部委託が進行しています。
これにより、かつて地域の栄養士や調理員が連携していた「手作り給食」の余地が狭まりました。

特に夏野菜のように調理や下処理に手間がかかる食材は、「扱いが難しい」という理由で避けられがちに。
例:トマトの皮むきやズッキーニの切り分けなど

また、現場では人手不足も深刻で、調理工程を減らすことが優先されるようになっています。

加工食品・冷凍食品への依存が進む理由

物価高や食材価格の不安定さも、夏野菜の使用を難しくしています。
新鮮な地元野菜を仕入れるにはタイミングやコストがネックとなり、結果として安定供給できる冷凍野菜や業務用ミックス野菜の出番が増えているのです。

さらに、調理の省力化・アレルギー対応・衛生管理といった課題にも対応しやすいため、現場では「安全第一、コスト第二、栄養はその次」という構図になりがちです。

食育としての「旬」が薄れるリスク

給食の場は、本来“食を学ぶ”貴重な機会です。
旬の野菜を体験することで、季節の移ろい・地域の恵み・食べ物の背景を自然と学ぶことができます。

しかし、通年で同じような冷凍野菜を使う現在の給食では、こうした感覚が育ちにくくなっています。
「給食で食べたトマトが苦手だったから、大人になっても避けている」という子どもが増えるのもその一例です。

地元野菜を残す取り組みも存在する

一方で、地域の農家と連携して夏野菜を給食に取り入れる試みも各地で進められています。

  • 地元産トマトを使った「トマトそうめん」
  • 夏野菜カレーに農家直送のピーマンやナスを活用
  • 収穫体験と連動した食育プログラムの実施

こうした取り組みはコストや手間がかかる反面、地域と子どもをつなぐ貴重な機会を生んでいます。

まとめ:給食が未来の食卓を育てる

給食は単なる「食事の提供」ではなく、未来の食習慣と価値観をつくる教育の場でもあります。
夏野菜が消えていくという小さな変化の裏には、教育・地域・経済が絡み合う大きな問題が横たわっています。

子どもたちが季節を感じ、食に関心を持つきっかけを失わないように。
私たち大人が「どんな給食を残したいか」を考えることが、いま求められているのかもしれません。