2025.05.30 コラム

地球温暖化と“旬”の変化——夏野菜の季節がズレている?

「昔よりもトマトの出回りが早くなった気がする」
「きゅうりやナスが6月にはもうピークになっている」
そんな実感を覚えたことはないでしょうか?

実は近年、夏野菜の「旬の時期」に変化が起きていると言われています。
その背景にあるのが、地球温暖化による気温の上昇や気象の不安定化です。
栽培環境の変化によって作付けのタイミングが早まり、逆に収穫のピークが短くなっているケースも増えています。

「旬」とは本来、その食材が一番おいしく、栄養価も高くなる時期のこと。
しかし気候の変化が続けば、私たちが慣れ親しんできた“季節の味覚”が、知らぬ間にズレていく可能性もあるのです。

気温上昇で「夏野菜の前倒し」が進む

夏野菜の代表格であるトマトやナス、きゅうり、ピーマンなどは、本来6月中旬〜8月にかけてピークを迎える作物です。
ところが近年では、4月下旬から5月中旬にかけて出荷が本格化するケースが増加しています。

これは春先から気温が高くなる傾向が続き、苗の生育スピードが早まっていることが一因です。
早く出荷できるのはメリットにも思えますが、逆に真夏のタイミングで品質が落ちたり、病害虫リスクが増えるなどの課題も抱えています。

気候の“ゆらぎ”が収穫タイミングを狂わせる

地球温暖化は単なる気温の上昇にとどまりません。
極端な天候(猛暑・ゲリラ豪雨・突風・長雨)が頻発するようになり、収穫のタイミングが予測しづらくなっているのが現状です。

特に雨が長く続くと実が裂ける「裂果」や、湿気による病害が起こりやすくなり、収穫できる時期が限られてしまうケースも増加。
本来であれば「旬」とされる時期に安定供給が難しくなるという、“旬が旬でなくなる”現象が起きています。

生産者は「旬」をコントロールし始めている

こうした状況に対応するため、生産者の側でも栽培時期や品種を工夫する動きが進んでいます。

  • ビニールハウスでの加温栽培で出荷時期を早める
  • 耐暑性・耐雨性の高い品種に切り替える
  • 収穫期間を分散させる作付けスケジュールの工夫

つまり、“自然まかせ”だった旬を人為的に管理・調整しなければ対応できない時代に入りつつあるのです。

消費者の感覚と「旬」がずれていく?

一方、消費者側では「スーパーに並んでいれば旬」と思い込む傾向もあり、本来の旬とのギャップが広がっています。

たとえば、5月のトマトを見て「もう夏野菜の季節か」と感じても、それが**ハウス栽培で早出しされた“人為的な旬”**である場合も少なくありません。

このように、気候変動と流通技術の発達が、私たちの“旬の感覚”を曖昧にしているとも言えるのです。

まとめ:気候とともに、私たちの「季節感」も問われる時代

「旬の野菜を食べること」は、単に栄養価や味の良さだけでなく、自然のリズムと調和した暮らし方でもあります。
しかし地球温暖化によってそのリズムが変化し、“いつもの季節に、いつもの野菜がない”という未来も現実味を帯びてきました

だからこそ、今こそ「なぜこの時期にこの野菜があるのか?」と一度立ち止まってみることが大切です。
気候変動を遠い出来事としてではなく、“旬の味が変わる”という身近な変化から感じ取ることが、次のアクションにつながる第一歩になるかもしれません。