2025.07.30 コラム

“A品”と“B品”の境界線——プロが仕分ける品質の目利き

スーパーの棚に並ぶツヤツヤのトマトや、形の整ったニンジン。
私たちが日々何気なく手に取っている野菜たちには、実は“見えない選別”の工程が存在しています。

市場や産地で行われる“仕分け”の現場では、同じ畑で採れた野菜でも「A品」と「B品」に分けられ、それぞれ異なる行き先へと運ばれていきます。

では、その「境界線」はどこにあるのでしょうか?
今回は、野菜の目利きのプロたちが実際に見ている「品質の基準」についてご紹介します。

「A品」と「B品」、何が違うの?

ざっくり言えば、

  • A品:形・色・大きさ・見た目・傷の有無などが「基準を満たしている」商品
  • B品:見た目に多少のキズや歪みがある、サイズが規格外、見た目が不揃いな商品

味や栄養に大きな差はない場合も多く、B品は「訳あり」「お徳用」として安く販売されたり、業務用や加工用として活用されます。

プロが見ている「判断ポイント」

卸や市場のプロたちは、次のような視点で野菜を見極めています。

① 形の整い具合

たとえばキュウリやニンジンであれば、まっすぐで適度な長さのものがA品に。
曲がりすぎていたり、分岐している“二股”などはB品扱いに。

② 色とツヤ

ナスやトマトなどは、鮮やかさやツヤ感も評価の対象。
多少のくすみや色ムラがあると、見た目の印象からB品に回されることがあります。

③ 傷・スレ・虫食い跡

小さなキズや皮むけ、虫のかじった痕があるだけで、味に影響がなくてもB品に。
逆に、少しのキズならパック詰めや加工用途で「A品相当」とされることもあります。

④ サイズ規格とのズレ

たとえば「Lサイズ規格」の箱に対して、大きすぎたり小さすぎたりする野菜はB品扱いに。
ただし近年は、規格外サイズも“個性”として受け入れる動きが広がりつつあります。

仕分けは“人の目”と“感覚”が頼り

驚くべきことに、この仕分け作業の多くは、今でも人の目と手によって行われています。
自動選別機が導入されている産地もありますが、最終判断は熟練の“目利き”が担うことが多く、まさに経験と感覚の世界です。

「この程度のキズならOK」
「この形ならA品に混ぜられる」
——そうした判断は、出荷先や用途、市場のニーズによっても変わります。

“見た目”の基準、変わりつつある?

最近ではフードロス削減の観点から、「形が悪いだけのB品」を積極的に活用する動きが増えています。

  • 規格外野菜専門の通販サイト
  • 飲食店との直接契約(調理でカットされるので見た目は関係ない)
  • 学校給食や福祉施設などへの流通

こうした取り組みにより、“見た目だけで判断される時代”は少しずつ変わり始めています。

おわりに:見えないプロの仕事に目を向けて

A品もB品も、同じように土の中で育ち、同じように手間暇かけて収穫された野菜たちです。
その背景には、「届ける相手に応じて、きちんと整えて渡す」という、目利きのプロたちの“仕分け”の仕事があります。

次にスーパーで野菜を手に取るとき、少しだけその“見えない判断の現場”に思いを巡らせてみてください。
そこには、味や価格だけでは測れない、“価値の目利き”が存在しています。