「農福連携」という言葉が、地域の取り組みを語る“やさしいキーワード”ではなく、政策と産業を動かす“戦略”になりつつあります。
農林水産省が2024年6月に改訂した「農福連携等推進ビジョン」では、令和12年度末までに農福連携等に取り組む主体数を1万2千以上に拡大するという、かつてない数値目標が掲げられました。
これは、農福連携が全国で“点から面”へと広がる、大きな転換点を意味しています。
🧭 政策のギアが一段上がった
従来、農福連携は一部の先進地域や福祉施設が主導する“モデル的な取り組み”でした。
しかし今回のビジョン改訂では、「地域協議会に参加する市町村を200以上に拡大」「支援体制の構築」など、国としての明確な数値目標と推進体制が打ち出されました。
これは、単なる助成や啓発にとどまらず、産業政策としての農福連携が本格始動したことを示しています。
🌱 主体が広がることで生まれる“地域の経済圏”
取り組み主体の増加は、単なる数合わせではありません。
1万2千という数字の先には、「農業の人手不足」と「福祉の働く場不足」という、2つの社会課題を同時に解決する地域経済圏の創出が見えています。
- 🧑🌾 農家にとって:作業力の確保、生産性の向上
- 🧑🦽 福祉施設にとって:利用者の就労機会の創出
- 🏘 地域にとって:経済循環と活性化
それぞれが独立して存在していた“課題”が、農福連携を軸に“資源”へと転換されていく――。
この構造の変化こそが、ビジョンの数値目標がもつ本当の意味です。
💰 政策と現場をつなぐ仕組み
全国で主体を増やすには、現場への支援が欠かせません。
国・自治体はすでに補助金・交付金・人材育成事業などの枠組みを整え始めています。
- マッチング支援による“出会い”の創出
- 加工・流通施設整備への補助
- 地域協議会の立ち上げ・運営支援
このような仕組みが整うことで、農福連携は一部の先進事例に依存しない「地域の標準モデル」へと近づいていきます。
🚀 今後の焦点 ―「広げる」から「深める」へ
数を増やすフェーズの次に重要になるのは、取り組みの質の深化です。
1万2千の主体がそれぞれの地域で経済・福祉・農業を結び、持続的なモデルを築くためには、
- 現場のコーディネーター人材の育成
- 企業・流通・自治体の連携強化
- ICTやデータを活用した効率化
といった“仕組みづくり”が欠かせません。
単なる「取り組み件数」ではなく、「成果と持続性」が問われる時代が来ています。
✨ 農福連携が地域の未来を変える
人口減少、担い手不足、孤立化。
多くの地域が直面する課題を、農業と福祉が“共に解く”時代が始まっています。
「1万2千」という数字はゴールではなく、スタートライン。
この大きなうねりの中で、地域ごとにどんな“物語”が生まれていくのか。
今、全国各地で農福連携の「本格展開」が動き出しています。