2025.10.09 医療福祉

直売所が変わる:障害者と農家が共に立つ“ベジポケット”型モデル

直売所といえば、これまでは農家が自らの野菜や果物を持ち寄り、地域の消費者と直接つながる「販売の場」として機能してきました。
しかし、その役割は今、大きく変わろうとしています。

2025年春、JA横浜が新たにスタートさせた「ベジポケット」は、農家と障害者が共に運営する農福連携型の直売所モデル
この取り組みは、販売のあり方そのものに新しい視点をもたらしています。

🧑‍🌾 農家だけではない「担い手」が生まれる

これまで直売所の多くは、農家自身が搬入・陳列・販売まで担うのが基本でした。
しかし、高齢化や人手不足により、直売所を支える労働力は全国的に課題となっています。

ベジポケットでは、障害のある方々が商品の補充・陳列・接客といった運営を担います。
農家は生産に集中でき、販売現場は“支え手”が増える。
こうして**「農家×福祉」の共働体制**が、直売所の持続可能性を高めています。

🛍️ “支援”ではなく“役割”としての参加

このモデルの本質は「障害者の就労支援」ではありません。
重要なのは、「役割を持って社会の一員として関わる」という点です。

接客や品出し、レジ打ちといった作業は、直売所にとって欠かせない実務です。
そこに障害のある方々が“主役”として入ることで、支援対象から現場の担い手へと立ち位置が変わります。

それは、福祉側にとっても「働く誇り」と「継続的な就労機会」の創出となり、農業側にとっても「現場を共に支える仲間」が増えることを意味します。

🧾 補助金と地域連携で“現実的な仕組み”に

このようなモデルが成立する背景には、国や自治体の補助制度の存在もあります。
農林水産省の農福連携推進施策や、地方自治体による就労支援事業によって、施設改修費や人件費補助が得られるケースも増えています。

ベジポケットも、こうした支援を活用しながら地域の福祉施設や企業と連携し、「支援事業」ではなく「ビジネスモデル」としての直売所をつくっています。

🤝 消費者との“関係性”も変わる

もうひとつ大きな変化は、「販売=モノの受け渡し」から、「販売=地域の物語の共有」へと広がっていることです。

消費者が直売所で手に取るのは、ただの野菜ではありません。

・誰が作り
・誰が並べ
・どんな地域で育ったのか

そうした背景が可視化されることで、「買い物」が「共感」になるのです。
障害者と農家が共に立つ現場には、消費者が自然と会話に参加する温かさがあります。

🚀 全国に広がる可能性

直売所は全国に約2万カ所以上あるとされる日本の販売インフラ。
その一部が「ベジポケット」のような農福連携モデルに変われば、

🧑‍🌾 農業の担い手不足解消

🧑‍🦽 就労機会の拡大

🏘 地域コミュニティの再生

といった複数の課題を一度に動かすことができます。

これは、補助金を起点とした一時的な取り組みではなく、地域の経済構造を変える「新しい直売所のかたち」です。

✨ まとめ ― 売る場所から「つながる場所」へ

「ベジポケット」が示したのは、直売所=“売る場所”ではなく、“つながる場所”にもなり得るという可能性です。

農業と福祉。生産と販売。地域と消費者。
これらが自然に混ざり合う場は、地域の未来を少しずつ変えていく力を持っています。

直売所の“カタチ”が変われば、地域の“暮らし”も変わる。
そんな新しい風が、いま各地に吹き始めています。