2025.09.15 野菜

台風シーズンと葉物価格

スーパーで「ほうれん草がいつもより高いな」と感じる季節があります。
その代表が、台風シーズンの初秋〜秋口
実は、この時期の葉物野菜の価格変動には、明確な“理由”があります。

価格の裏側には、生産現場・天候・流通、そして消費者の行動が複雑に絡み合っています。

🥬 台風が葉物野菜に与える“直接的な打撃”

葉物野菜――特にほうれん草、小松菜、レタス、サンチュなどは、雨や風に弱い繊細な作物です。
強風で葉が裂けたり、豪雨で畑が冠水したりすると、出荷できる量そのものが激減します。

また、葉物は果菜(トマトやナスなど)と違い、貯蔵性が低いのも特徴です。
一度ダメージを受けると、数日単位で価格が上がるほど供給に影響が出ます。

つまり、台風が1つ通過するだけで、市場価格に即座に波及するのが葉物野菜なのです。

🚜 台風が過ぎても「価格がすぐ戻らない」理由

台風通過後に晴天が戻っても、価格はすぐに元通りにはなりません。
なぜなら――

  • 再播種(種まき)しても収穫まで2〜4週間かかる
  • 圃場がぬかるみ、作付け再開まで時間が必要
  • 物流ルートの寸断で市場への搬入が遅れる

生産地での一時的な被害が、消費地の価格に“遅れて”反映されるのです。
これが、秋の「葉物高騰」の背景にある時間差のメカニズムです。

📦 価格を支える「産地リレー」という仕組み

日本では、ひとつの産地に依存せず、季節ごとに栽培地をリレーして出荷する「産地リレー」が進んでいます。
例えば、夏は東北、秋は関東、冬は九州…といった具合です。

この仕組みによって、一部の産地が台風で被害を受けても、他の産地がカバーし、価格の乱高下を抑える役割を果たしています。

しかし、近年は大型台風が複数回襲来するケースも増え、複数産地が同時に被害を受ける年もあります。
こうなると、リレーのバトンが途切れ、価格は一気に高騰してしまうのです。

🧑‍🌾 近年のトレンド ― 「価格高騰は一過性ではない」

ここ数年は、台風の大型化・集中化が顕著です。
被害規模が大きくなると、

  • 種苗費や人件費の高騰
  • 栽培計画のズレ
  • 消費者の購買抑制

といった中長期的な影響が広がります。
特に外食産業や加工業者にとっては、安定仕入れが難しくなり、価格転嫁や仕入先の分散が進む動きも見られます。

📝 消費者にできること ― “買い方”で支える

台風シーズンの葉物高騰は、自然現象と流通構造が原因であるため、「安定価格」を求めるだけでは解決しません。

  • 規格外・B品野菜を活用する
  • 冷凍野菜や根菜などの代替食材を選ぶ
  • 直売所や地元産の出荷情報に目を向ける

といった「柔軟な買い方」が、結果的に生産者の支援にもつながります。

🌿 まとめ ― 価格の裏に“畑の物語”あり

台風が来るたびにニュースになる「野菜の価格高騰」。
でも、その背景には、風雨にさらされる畑、必死に再播種する農家、流通を立て直す関係者たちの姿があります。

葉物野菜は、まさに“天候とともに生きる作物”。
価格は単なる数字ではなく、現場のリアルを映す鏡です。

台風シーズンにスーパーで野菜を手に取るとき、
その1束の向こう側にある“農の現場”を、少しだけ思い描いてみるのもいいかもしれません。