2025.11.04 流通

フードマイレージを減らせ!野菜の「輸送距離」が示す環境負荷と地産地消の価値

私たちが普段何気なく食べている野菜や果物。その美味しさの裏側には、広大な大地と、それを食卓まで届ける複雑な「物流」の努力があります。しかし、この物流が、現代において無視できない環境負荷を生み出しています。

持続可能な社会を目指す上で、野菜の流通はどのように変わりゆくべきでしょうか。鍵となるのが、「フードマイレージの削減」と、輸送手段の多様化である「モーダルシフト」です。

フードマイレージ」が示す環境への負担

フードマイレージとは、食料の輸送量(トン)に輸送距離(キロメートル)を掛け合わせた指標です。この数値が大きいほど、輸送にかかるエネルギー消費、すなわちCO2排出量が多いことを示します。

日本の食料は、遠方からの輸入や国内の長距離輸送に依存している部分が多く、フードマイレージは高水準にあります。特に野菜の輸送では、鮮度を保つためにトラックによる迅速な配送が主となりますが、これは環境負荷の大きな要因です。

私たちは、この「見えないコスト」を認識し、食材選びの意識を変える必要があります。

環境、経済、コミュニティを強化する「地産地消」

フードマイレージを根本的に削減する最も有効な手段こそ、「地産地消」です。地元で採れた野菜を地元で消費することは、環境面、経済面、社会面で多大なメリットをもたらします。

  • 環境への優しさ
    輸送距離が短縮されることで、トラック輸送に伴うCO2排出量が大幅に削減されます。
  • 地域の経済循環
    地元の農家から直接購入することで、消費者の支払いがそのまま地域の生産者を支え、地域経済の活性化に繋がります。
  • 食の安全性と教育
    生産者の顔が見えることで安心感が生まれる上、子どもたちの食育において、食物が育つ過程や収穫の喜びを学ぶ貴重な機会となります。

近年では、地域のスーパーや学校給食、レストランなどで地産地消が積極的に取り入れられ、「輸送距離の短い食」を選ぶ価値が再評価されています。

長距離輸送を支える「モーダルシフト」

もちろん、温暖な地域でしか育たない野菜や、国内でまかないきれない大量の食料は、長距離輸送を避けられません。そこで重要となるのが、環境負荷の少ない輸送手段への転換、すなわち**「モーダルシフト」**です。

これは、主にトラックで行っていた輸送を、鉄道貨物輸送や内航海運(船舶)へ切り替えることです。

輸送手段二酸化炭素排出量(営業用トラックを100とした場合)

鉄道:約13%
内航海運:約4%

特に大量の物資を長距離運ぶ場合、鉄道や船舶はトラックに比べて排出量が圧倒的に少なく、CO2削減に大きく貢献します。青果物の輸送においても、鮮度を保つための冷蔵・冷凍コンテナの技術が進歩しており、鉄道や船舶を活用した持続可能な輸送ルートの構築が進められています。

最後に:賢い選択が未来を創る

私たちの食卓に並ぶ野菜一つ一つが、地球環境や地域の未来に影響を与えています。

地元の農産物を積極的に選び、遠方からの食材についてはモーダルシフトによって支えられた、環境負荷の低い流通を支持する。この「賢い選択」こそが、持続可能な食料システムと、豊かで活気のある地域社会を実現するための力強い一歩となるでしょう。