スーパーの値札を見ていて、「また野菜が値上がりしてる…」と感じること、増えていませんか?
その理由としてよく挙げられるのは、「天候不順」「不作」「原材料高騰」「産地の人件費アップ」などですが、実はその陰でじわじわ効いてくるのが “物流コスト” です。
畑から市場へ、市場からセンターへ、センターから店舗へ、そしてネット通販であれば、さらに各家庭の玄関先まで。
“運ぶ”という行為は、思っている以上にたくさんの費用を連れてきます。
価格の中に必ず入っている「運ぶお金」
野菜の値段の内訳をざっくり分けると、
- 生産のコスト(種・苗・肥料・人件費など)
- 物流のコスト(輸送・保管・仕分け・梱包など)
- 小売のコスト(店舗運営・人件費など)
に分かれます。
この中で“物流”は、表に出にくい存在です。
袋の裏に「〇〇県産」と産地名は書いてあっても「この商品には物流コストが◯円かかっています」とは、どこにも書かれていません。
でも、産地から何百キロも離れた都市のスーパーに、毎日のように安定して野菜を届けるためにはトラック・ドライバー・倉庫・仕分け作業…と多くの「運ぶための仕事」が動いています。
この積み重ねが、1個・1袋あたりで見ると数円〜十数円程度でも全体としてみると決して無視できないコストになっていきます。
物流コストを押し上げる要因たち
では、その物流コストを押し上げているものは何でしょうか。
代表的なものを挙げると、
- 燃料費
トラックを走らせる以上、ガソリン・軽油の価格はダイレクトに響きます。
燃料が上がれば、1往復あたりのコストも当然アップします。 - 人件費・ドライバー不足
運転・積み下ろし・仕分けなど、物流はまだまだ“人の手”に頼る部分が多い世界。
ドライバー不足が続く中で、賃金の引き上げや労働環境の改善が求められれば、その分コストも上乗せされます。 - 高速料金・倉庫費用・設備投資
夜間に長距離を走るための高速料金、温度管理された倉庫・冷蔵設備の維持費、省人化や効率化のためのシステム投資なども、すべて“物流側”の負担として乗ってきます。 - 冷蔵・保冷のためのコスト
野菜は鮮度命。
冷蔵車を使う、保冷剤や保冷資材を入れる、温度を管理したセンターで扱う――といった工夫の裏には、当然それに見合うコストが発生しています。
こうした要素が少しずつ重なり「さすがにこれ以上は現場努力だけでは吸収できない」というラインを超えると、最終的に“値上げ”という形で表に出てきます。
「産地のせい」だけではない値上げ
値上げのニュースでは、どうしても「不作で仕入れ値が上がった」「生産者のコストが増えた」といった“畑側”の事情がクローズアップされがちです。
もちろんそれも大きな要因ですが、実際には、
- 産地 → 市場(または集荷拠点)
- 市場 → 物流センター
- 物流センター → 店舗・飲食店
という、いくつもの中継ポイントで「運ぶためのコスト」が少しずつ積み上がっています。
それぞれの段階で、燃料・人件費・設備費が上がれば、中間にいる卸や物流会社だけが延々と我慢し続けることはできません。
結果として、野菜1つあたりの“運賃”もじわっと上がり、そのまま店頭価格へ反映されていくことになります。
「値上げせずに頑張る」現場で何が起きているか
一方で、簡単に値上げできない現場もたくさんあります。
そんなとき、物流側では次のような対策が取られています。
- ルートの見直し(遠回りを減らし、効率の良い順番に回る)
- 積載効率を高める(1台あたりに積める量を増やす)
- 共同配送・混載配送を増やす(複数の荷主の荷物をまとめて運ぶ)
- 小ロットの頻繁な配送を減らし、ある程度のロットでまとめる
つまり、「同じ距離を走って、より多く、より効率的に運ぶ」ことで1箱・1個あたりのコストを何とか抑えようとしているわけです。
それでも限界が来れば、“値上げ”という選択肢を取らざるを得ません。
消費者としてできる、ささやかなサポート
もちろん、私たちが直接、物流コストをどうこうすることはできません。
ですが、間接的に「負担を減らす」行動はあります。
たとえば、
- ネット通販での再配達を減らす(日時指定・置き配の活用など)
- 近場で採れた野菜や、地場産コーナーを選ぶことで、輸送距離を短いものを選ぶ
- まとめ買い・計画的な買い物で、「頻繁な小口配送」に頼りすぎない
といった小さな行動は、少しずつですが「運ぶ負担」を軽くすることにつながっています。
おわりに:値札の向こうにある“見えないコスト”へ目を向ける
野菜の値札に書かれているのは「〇〇円」という数字だけですが、その裏には
- 畑でのコスト
- 運ぶコスト(物流)
- 店頭で売るためのコスト
が折り重なっています。
次に「また値上げか…」と思ったとき、産地や生産者だけでなく、夜中も早朝もトラックを走らせている物流現場の姿もほんの少しだけ想像してみてください。
私たちの毎日の食卓はそうした“見えないコスト”とそれを支える人たちの上に成り立っています。