2025.11.14 流通

飲食店向けとスーパー向け、物流はどこが違う?

同じ「きゅうり」や「トマト」でも、それが向かう先が飲食店なのかスーパーなのかで、物流の組み立て方は大きく変わります。

お客様の目の前に並ぶ“売り物”としての野菜と、厨房で切られて調理される“素材”としての野菜。
求められる量もタイミングも、優先されるポイントも違うので、その裏側の物流も自然と別物になっていきます。

ここでは、飲食店向けとスーパー向けの物流の違いを、ざっくりと整理してみます。

必要なタイミングと頻度の違い

飲食店向け

  • 納品時間は「営業前」が基本。
  • 早朝〜午前中に集中することが多い。
  • 「その日の予約状況」や「メニュー」によって日々の使用量が変わりやすい → 小ロット・高頻度。

スーパー向け

  • 店舗の開店時間より前に納品されるケースもあれば、
    バックヤードの体制次第で日中にも分散。
  • 日ごとの売上データやチラシ・特売の計画に基づいて、ある程度まとまった量を発注 → 大ロット・中〜低頻度。

→ 飲食店向けは「細かく・頻繁に」、スーパー向けは「まとめて・計画的に」動く傾向があります。

ロットと品目数の違い

飲食店向け

  • 一度に仕入れる量は比較的少ないが、品目数が非常に多い。
    (例:トマト2kg、きゅうり10本、ハーブ少量、珍しい野菜を少し…など)
  • 「少量多品目」を細かくピッキングして積み合わせる必要があり、仕分けの手間が大きい。

スーパー向け

  • 同じ商品をケース単位でどん、と動かす世界。
    (例:きゅうり10ケース、レタス20ケース、トマト15ケースなど)
  • 品目数は限られていても、1品目あたりのロットが大きく、パレット単位での運用もしやすい。

→ 飲食店向けは“手作業で細かく分ける”手間、スーパー向けは“量をどう効率的に運ぶか”の工夫が重要になります。

求められる品質の“方向性”の違い

飲食店向け

  • 見た目よりも「味・歩留まり・使いやすさ」が重視されることも多い。
    (多少曲がっていても、皮をむいてカットすれば問題なし、など)
  • カット野菜・下処理済み野菜など、加工前提の商品も多い。
  • シェフや料理人とのやり取りで、「この品種を」「この規格を」など、かなり細かいオーダーが出ることも。

スーパー向け

  • お客様が手に取る“商品”としての見た目が非常に重要。
    まっすぐ、形がきれい、傷が少ない、サイズが揃っている…など。
  • POPや陳列との相性もあり、「パッと見て揃っている」ことが価値になる。

→ 同じ産地から出てきた野菜でも、行き先によって“求められる顔つき”が変わり、その選別も物流の中で行われます。

ルート設計とドライバーの動き

飲食店向け

  • 都市部では、飲食店が密集したエリアをトラックがぐるぐる回る「ルート配送」が多い。
  • 納品先ごとの注文数がバラバラで、時間指定も細かい。
  • 都心では路駐スペースが限られ、短時間で荷降ろしする必要があり、ドライバーの“現場力”が品質を左右する。

スーパー向け

  • 多くは物流センター → 各店舗という、比較的シンプルな構造。
  • 店舗ごとに台数・時間帯が決まっており、ルーティン化しやすい。
  • パレット単位での積み下ろしや、バックヤードにある程度のスペースを前提に動く。

→ 飲食店向けは“細かい寄り道の多い配達”、スーパー向けは“幹線と支線がはっきりした定期便”というイメージです。

在庫とリスクの考え方

飲食店向け

  • 在庫を持ちすぎるとロスが痛いので、「必要な分だけ」の発注が基本。
  • 仕入れ担当者と業務用卸・仲卸とのコミュニケーションが密で、「今日はこれが安い」「この野菜は傷みが早そう」など、かなりリアルタイムなやり取りが行われる。

スーパー向け

  • 売場の棚を常に“埋めておく”ことも重要なミッション。
  • 値付け(価格調整)や特売、見切り品コーナーなどを活用しながら、多少の在庫リスクを前提に発注することもある。
  • ロス率と売場の見栄えのバランスを、数字で管理していく世界。

→ 飲食店は“ロスを極力減らすための仕入れ”、スーパーは“売場を充実させるための仕入れ”という違いとも言えます。

おわりに:同じ野菜でも「どこで食べられるか」で物流は変わる

私たちがランチで食べるサラダも仕事帰りにスーパーで買うサラダ用の野菜も、もとは同じ畑で育った野菜かもしれません。

しかし、その野菜が

  • 厨房へ向かうのか
  • 売り場の棚へ向かうのか

によって、必要とされる物流の形・スピード・手間は大きく変わります。

「飲食店向け」と「スーパー向け」の違いを知ると同じ野菜でも“どこで・どんな形で出会うか”という視点で見るのがちょっと面白くなってくるかもしれません。