スーパーのバックヤードや市場に積み上がった野菜のダンボール。
「どれも同じ箱」に見えますが、実は中身の野菜を守るために、かなり細かい工夫が詰め込まれています。
輸送中の揺れや圧力、温度や湿気――。これらから野菜を守る“最初の盾”が、実はこのダンボールなのです。
ここでは、野菜用のダンボールがどんなポイントで設計されているのか、少しだけ覗いてみましょう。
通気孔の位置と大きさで“呼吸”を助ける
野菜は収穫後も呼吸を続けています。
そのため、箱の側面や上部に空いている小さな穴(通気孔)は単なる「持ち手」ではなく、
- 熱がこもらない
- 湿気を逃がす
- 冷気が中まで届く
といった役割を持っています。
通気孔が少なすぎると箱の中が蒸れて傷みやすくなり逆に多すぎると強度が落ちて崩れやすくなる――。
このバランスを取るのが、箱づくりの重要なポイントです。
強度と軽さのバランス設計
野菜の箱は、トラックの中で「何段も積まれる」のが前提。
そのため、上からの重さに耐える圧縮強度が求められます。
とはいえ、あまりに分厚く重い材質にすると、
- 1箱あたりの重量が増えて、持ち運びが大変
- 輸送コストも上がる
という問題が出てきます。
そこで、紙の層の数や波の形状(フルート)を調整しながら「できるだけ軽く・でも潰れない」ギリギリのラインを狙った設計が行われています。
サイズと詰め方が“傷みにくさ”を左右する
箱のサイズもとても重要です。
中途半端に余白があると、運送中に野菜同士がぶつかって傷みやすくなります。
きゅうりやナスなど、形が揃っている野菜ほど、
- 何本×何段で入れるか
- どの向きで並べるか
といった“パズル”のような設計が行われます。
この「専用設計」の箱を使うことで、
- 無駄な隙間が減る
- 1箱あたりの入り数が安定する
- 結果的に輸送効率も上がる
というメリットが生まれます。
情報を載せられる“メディア”としての箱
ダンボールは、ただの容器ではなく「情報を伝えるメディア」としての役割も持っています。
- 産地名・生産者名
- 品種
- 等級・サイズ
- 保存方法・取扱注意
などが印刷されていることで、
市場や小売店の担当者が、中身を開けなくても判断できるようになります。
最近ではブランド野菜用の箱にデザイン性の高い印刷を施し、「箱を見ただけで、その産地だと分かる」ブランディングに活用されることも増えています。
おわりに:見慣れた箱にも“現場の知恵”が詰まっている
野菜のダンボールは、一見するとどれもよくある茶色い箱。
しかしその裏には、
- 通気性
- 強度
- 軽さ
- 詰めやすさ
- 情報伝達
といった、物流と品質を両立させるための知恵が詰まっています。
次に市場やスーパーのバックヤードをのぞく機会があったらぜひ「箱の穴の位置」や「印刷されている情報」にも、少し注目してみてください。
いつも何気なく捨てているそのダンボールが実は野菜のおいしさを守る“名脇役”だと感じられるはずです。