2025.12.23 流通

クレーム(傷み・潰れ)の原因はどこにある?“逆算”で潰す品質事故

「届いた時点で傷んでいた」「箱を開けたら潰れていた」「汁が出ていた」——流通の現場で発生するクレームの多くは、原因がひとつに見えても、実際は複数の工程の“積み重ね”で起きます。しかも厄介なのが、傷みや潰れは“最後に気づく”だけで、原因はもっと前に仕込まれていることが多い点です。

そこで有効なのが、“逆算”で潰すという考え方です。クレームを「起点」ではなく「結果」と捉え、どの工程で、どんな条件が重なると再発するのかを逆向きに追います。この記事では、傷み・潰れの品質事故を、再発防止につながる形で整理します。

クレームは「最後の工程」で見つかるだけ

たとえば潰れクレームは「配送が荒かった」と思われがちですが、実際には次のように“前工程の弱さ”が隠れていることがあります。

  • 収穫時点で微細な傷が入っていた
  • 選別が甘く、柔らかい個体が混ざっていた
  • 予冷が不十分で、輸送中に呼吸・劣化が進んだ
  • 包装が合っておらず、荷重が一点に集中した
  • 積み付けで揺れ・振動が増幅された

つまり、クレーム対応で重要なのは「どこが悪かったか」ではなく、どこで弱くなったか(ダメージが入り始めたか)を見つけることです。

“逆算”の基本:結果→症状→原因工程をたどる

逆算のコツは、いきなり原因を決めつけず、まず症状を分解することです。症状が分かれると、原因工程の候補が絞れます。

クレームの症状よくある原因の方向性疑うべき工程(例)
一部だけ潰れている(点で潰れ)荷重集中/当たり傷包装設計、箱内固定、積み付け
全体が柔らかい(ふにゃっと)温度管理/熟度過多収穫タイミング、予冷、温度帯、滞留
汁漏れ・べたつき圧迫+温度上昇積み付け、振動、温度ムラ、ドア開閉
カビ・異臭結露/衛生/滞留温度変動、包装内湿度、保管時間
傷が広がっている(褐変など)微細な傷+時間経過収穫・選別・箱詰めの扱い

症状が工程に紐づくと、「次に見るべき証拠」も決まってきます。

原因が入りやすい“5つの工程”

傷み・潰れの品質事故は、だいたい次の5工程のどこか(または複合)で起きます。順に“逆算で点検”していきます。

1)収穫・受け入れ(最初の微細ダメージ)

ここで入った傷は、配送中に“育つ”ことがあります。微細な傷や圧迫が、時間経過で褐変・腐敗につながるためです。

  • 収穫時の投げ入れ、コンテナ落下
  • 受け入れ時に柔らかい個体が混在
  • 熟度・水分量が高く、そもそも潰れやすいロット

2)選別・仕分け(基準のブレが後で効く)

選別が曖昧だと、「潰れやすい個体」が混ざり、箱単位で事故率が上がります。品質のブレは“工程の後半”で顕在化します。

  • サイズ違いで隙間が増え、動いて当たる
  • 柔らかい個体が混ざり、荷重で潰れやすい層ができる
  • 基準が文章だけで、現場解釈が割れる

3)包装・箱詰め(潰れは“設計”で防ぐ)

潰れやすい現場の特徴は、包装が「見た目」中心になっており、荷重や振動の設計が不足していることです。ここは改善効果が大きいポイントです。

  • 箱の強度不足、底抜けリスク
  • 緩衝がなく一点に荷重が乗る
  • 隙間が多く揺れで当たり傷が増える
  • 通気が悪く結露が起きやすい

4)保管・予冷・温度(傷みを“早送り”にする要因)

傷みの加速要因は温度です。温度が高いほど呼吸が進み、柔らかくなり、衝撃に弱くなります。さらに温度変動があると結露が起き、カビや異臭の原因にもなります。

  • 予冷不足で商品温度が高いまま出荷
  • 庫内の温度ムラ、ドア開閉が多い
  • 積み方で冷気の流れが塞がれ、局所的に温度が上がる

5)積み付け・輸送(振動と荷重が“最後の一押し”)

輸送は原因の“主犯”というより、前工程で弱くなった個体に対して、振動・荷重・温度変動が最後の一押しになることが多いです。

  • 吹き出し口を塞ぐ積み付けで温度ムラ
  • 箱の段積みが高すぎて下段に荷重
  • 荷崩れ防止が不十分で揺れが増幅
  • 配送先での滞留(搬入口・バックヤード)

逆算を“再発防止”に変える3つの取り方

原因究明が空回りする理由は、「証拠が足りない」「工程をまたぐ」「責任の話になりやすい」の3つです。そこで、再発防止につながる取り方に変えます。

  • 1)写真は“開封直後”に撮る(角度と距離も固定)
    潰れ位置、汁漏れ、結露、箱の歪み、緩衝材の状態が分かるように撮影します。
  • 2)ロット情報を最低限揃える
    出荷日、到着日、品目、数量、便、温度帯、梱包仕様(箱/緩衝)だけで切り分け精度が上がります。
  • 3)“どこでダメージが入ったか”を仮説で分ける
    (収穫・選別)/(包装)/(温度)/(輸送)のどれが強いか、仮説を立てて検証します。

すぐ効く改善:まずはここから(小さく始める)

大改修より、まずは“事故率が下がる打ち手”から入るのがおすすめです。効果が出やすい順に挙げます。

  • 包装の「荷重集中」を潰す
    当たりが出る箇所に緩衝、箱内の隙間を減らす、段積み高さの上限を決める。
  • 選別基準を写真化する
    文章より写真。現場の判断が揃うと事故率が下がります。
  • 温度の“節目”だけ記録する
    出荷時・到着時・受け渡し時。最低限これだけで、温度要因の切り分けができます。
  • 積み付けルールを1つだけ決める
    吹き出し口を塞がない、回風スペース確保、下段荷重の上限など。
  • クレームが出たときの“標準手順”を作る
    写真、ロット情報、一次切り分け、次の検証(テスト出荷等)をテンプレ化します。

まとめ:クレームは“結果”。原因は前工程にある

傷み・潰れクレームは、配送だけを疑うと解決が遠回りになります。症状を分解し、結果から逆算して工程をたどると、原因候補が絞れます。そして、再発防止で効くのは「包装の荷重設計」「選別基準の統一」「温度の節目記録」の3点です。

まずは、直近で多いクレームを1つ選び、写真とロット情報を揃えて“逆算”してみてください。原因が見えると、改善は意外と小さく始められます。