「届いた時点で傷んでいた」「箱を開けたら潰れていた」「汁が出ていた」——流通の現場で発生するクレームの多くは、原因がひとつに見えても、実際は複数の工程の“積み重ね”で起きます。しかも厄介なのが、傷みや潰れは“最後に気づく”だけで、原因はもっと前に仕込まれていることが多い点です。
そこで有効なのが、“逆算”で潰すという考え方です。クレームを「起点」ではなく「結果」と捉え、どの工程で、どんな条件が重なると再発するのかを逆向きに追います。この記事では、傷み・潰れの品質事故を、再発防止につながる形で整理します。
クレームは「最後の工程」で見つかるだけ
たとえば潰れクレームは「配送が荒かった」と思われがちですが、実際には次のように“前工程の弱さ”が隠れていることがあります。
- 収穫時点で微細な傷が入っていた
- 選別が甘く、柔らかい個体が混ざっていた
- 予冷が不十分で、輸送中に呼吸・劣化が進んだ
- 包装が合っておらず、荷重が一点に集中した
- 積み付けで揺れ・振動が増幅された
つまり、クレーム対応で重要なのは「どこが悪かったか」ではなく、どこで弱くなったか(ダメージが入り始めたか)を見つけることです。
“逆算”の基本:結果→症状→原因工程をたどる
逆算のコツは、いきなり原因を決めつけず、まず症状を分解することです。症状が分かれると、原因工程の候補が絞れます。
| クレームの症状 | よくある原因の方向性 | 疑うべき工程(例) |
|---|---|---|
| 一部だけ潰れている(点で潰れ) | 荷重集中/当たり傷 | 包装設計、箱内固定、積み付け |
| 全体が柔らかい(ふにゃっと) | 温度管理/熟度過多 | 収穫タイミング、予冷、温度帯、滞留 |
| 汁漏れ・べたつき | 圧迫+温度上昇 | 積み付け、振動、温度ムラ、ドア開閉 |
| カビ・異臭 | 結露/衛生/滞留 | 温度変動、包装内湿度、保管時間 |
| 傷が広がっている(褐変など) | 微細な傷+時間経過 | 収穫・選別・箱詰めの扱い |
症状が工程に紐づくと、「次に見るべき証拠」も決まってきます。
原因が入りやすい“5つの工程”
傷み・潰れの品質事故は、だいたい次の5工程のどこか(または複合)で起きます。順に“逆算で点検”していきます。
1)収穫・受け入れ(最初の微細ダメージ)
ここで入った傷は、配送中に“育つ”ことがあります。微細な傷や圧迫が、時間経過で褐変・腐敗につながるためです。
- 収穫時の投げ入れ、コンテナ落下
- 受け入れ時に柔らかい個体が混在
- 熟度・水分量が高く、そもそも潰れやすいロット
2)選別・仕分け(基準のブレが後で効く)
選別が曖昧だと、「潰れやすい個体」が混ざり、箱単位で事故率が上がります。品質のブレは“工程の後半”で顕在化します。
- サイズ違いで隙間が増え、動いて当たる
- 柔らかい個体が混ざり、荷重で潰れやすい層ができる
- 基準が文章だけで、現場解釈が割れる
3)包装・箱詰め(潰れは“設計”で防ぐ)
潰れやすい現場の特徴は、包装が「見た目」中心になっており、荷重や振動の設計が不足していることです。ここは改善効果が大きいポイントです。
- 箱の強度不足、底抜けリスク
- 緩衝がなく一点に荷重が乗る
- 隙間が多く揺れで当たり傷が増える
- 通気が悪く結露が起きやすい
4)保管・予冷・温度(傷みを“早送り”にする要因)
傷みの加速要因は温度です。温度が高いほど呼吸が進み、柔らかくなり、衝撃に弱くなります。さらに温度変動があると結露が起き、カビや異臭の原因にもなります。
- 予冷不足で商品温度が高いまま出荷
- 庫内の温度ムラ、ドア開閉が多い
- 積み方で冷気の流れが塞がれ、局所的に温度が上がる
5)積み付け・輸送(振動と荷重が“最後の一押し”)
輸送は原因の“主犯”というより、前工程で弱くなった個体に対して、振動・荷重・温度変動が最後の一押しになることが多いです。
- 吹き出し口を塞ぐ積み付けで温度ムラ
- 箱の段積みが高すぎて下段に荷重
- 荷崩れ防止が不十分で揺れが増幅
- 配送先での滞留(搬入口・バックヤード)
逆算を“再発防止”に変える3つの取り方
原因究明が空回りする理由は、「証拠が足りない」「工程をまたぐ」「責任の話になりやすい」の3つです。そこで、再発防止につながる取り方に変えます。
- 1)写真は“開封直後”に撮る(角度と距離も固定)
潰れ位置、汁漏れ、結露、箱の歪み、緩衝材の状態が分かるように撮影します。 - 2)ロット情報を最低限揃える
出荷日、到着日、品目、数量、便、温度帯、梱包仕様(箱/緩衝)だけで切り分け精度が上がります。 - 3)“どこでダメージが入ったか”を仮説で分ける
(収穫・選別)/(包装)/(温度)/(輸送)のどれが強いか、仮説を立てて検証します。
すぐ効く改善:まずはここから(小さく始める)
大改修より、まずは“事故率が下がる打ち手”から入るのがおすすめです。効果が出やすい順に挙げます。
- 包装の「荷重集中」を潰す
当たりが出る箇所に緩衝、箱内の隙間を減らす、段積み高さの上限を決める。 - 選別基準を写真化する
文章より写真。現場の判断が揃うと事故率が下がります。 - 温度の“節目”だけ記録する
出荷時・到着時・受け渡し時。最低限これだけで、温度要因の切り分けができます。 - 積み付けルールを1つだけ決める
吹き出し口を塞がない、回風スペース確保、下段荷重の上限など。 - クレームが出たときの“標準手順”を作る
写真、ロット情報、一次切り分け、次の検証(テスト出荷等)をテンプレ化します。
まとめ:クレームは“結果”。原因は前工程にある
傷み・潰れクレームは、配送だけを疑うと解決が遠回りになります。症状を分解し、結果から逆算して工程をたどると、原因候補が絞れます。そして、再発防止で効くのは「包装の荷重設計」「選別基準の統一」「温度の節目記録」の3点です。
まずは、直近で多いクレームを1つ選び、写真とロット情報を揃えて“逆算”してみてください。原因が見えると、改善は意外と小さく始められます。