グループホーム運営で、じわじわ効いてくるのが「家族との距離感」です。連絡が少ないと不安が増え、連絡が多すぎると現場が回らない。さらに、家族の要望が強い場合や、逆に無関心に見える場合など、状況はさまざまです。
ここで大切なのは、気合いで頑張ることではなく、連絡頻度・内容・ルートを“整える”ことです。仕組みがあると、家族の安心にもつながり、職員の負担も減ります。この記事では、トラブルを増やさずに関係性を安定させるための実務のコツを整理します。
なぜ家族対応は難しくなりやすいのか
家族対応が難しくなる理由は、単に「相性」ではなく、構造的なものが多いです。
- 情報の非対称:家族は日常を見られず、不安になりやすい
- 期待のズレ:家族が想定する支援と、提供できる支援が一致しない
- 責任の混線:「誰が決めるのか」「どこまでお願いできるのか」が曖昧
- 窓口の分散:職員ごとに返答が違い、話が大きくなる
つまり、関係性の問題に見えても、まずは運用の問題として整える方が改善しやすいです。
最初に決める:連絡を「3種類」に分ける
連絡がこじれる原因のひとつは、「何をどのテンションで連絡するか」が混ざることです。まずは連絡を3種類に分けておくと、家族も現場も迷いにくくなります。
- ① 定期連絡(ルーティン)
安心のための“定期便”。近況・食事・睡眠・活動・体調のざっくり共有。 - ② 変化連絡(いつもと違う)
転倒、発熱、食欲低下、服薬変更など「判断に影響する変化」を共有。 - ③ 緊急連絡(今すぐ判断が必要)
救急搬送、重大な事故、医療機関受診の同意など。
この分類を最初に合意しておくと、「それは定期連絡でまとめます」「これは変化連絡として共有します」と整理しやすくなります。
連絡頻度の“落としどころ”を作る
連絡頻度は、家族の安心と職員負担のバランスが必要です。おすすめは、基本頻度+例外ルールで設計することです。
例:頻度設計のイメージ
- 基本:月1回の定期連絡(近況まとめ)
- 入居直後:最初の1〜2か月だけ頻度を上げる(例:2週に1回)
- 変化があった時:都度、変化連絡
- 緊急時:即時、緊急連絡
「不安が強い家族」には頻度を上げるのではなく、定期の枠を太くする方が現場は回りやすいです(例:月1回を丁寧に、必要な時だけ追加)。
内容を整える:伝えるべきこと/伝えなくてよいこと
家族連絡がこじれるのは、情報量の問題ではなく「受け取り方」と「解釈」の問題であることが多いです。だからこそ、内容の型が効きます。
定期連絡(安心のためのまとめ)に入れると良い項目
- 体調:大きな変化の有無、気になる点(短く)
- 生活:睡眠、食事、入浴、排泄などの“全体像”
- 活動:参加したこと、本人の様子(できれば具体例を1つ)
- 支援:最近の工夫・うまくいっている点
- お願い:家族に協力してほしいこと(次回面会の持ち物など)
変化連絡(いつもと違う)で必ず押さえる項目
- 事実:いつ/どこで/何が起きたか(憶測は分ける)
- 現在:今どういう状態か(落ち着いているか等)
- 対応:施設が行った対応、医療機関への相談有無
- 次の判断:家族に確認したいこと(受診同意、経過観察など)
- 見通し:次に連絡するタイミング(例:○時に再度ご連絡します)
一方で、日々の細かな行動の実況や、職員の主観的な評価は、誤解を生みやすい場合があります。必要な範囲に絞り、「伝え方の型」に寄せることでトラブルが減ります。
窓口を整える:担当者・ルート・時間帯を決める
現場負担が増える典型パターンが「誰にでも電話が来る」「返答が人で変わる」です。これを避けるために、窓口を整理します。
- 窓口は原則1つ:生活支援の窓口(例:管理者または担当職員)を決めます
- 連絡手段を統一:電話・メール・LINE等、主ルートを決めます
- 連絡可能な時間帯:「○時〜○時」などルール化し、緊急時のみ例外にします
- 記録のルール:連絡内容は簡易でも必ず記録し、引き継げる状態にします
家族の要望が強いとき:押さえるべき話し方
要望が強い家族に対しては、感情の話と運用の話が混ざりやすいです。大切なのは、共感を示しつつ、“できること/できないこと”を条件で説明することです。
- 共感:「ご不安なお気持ちは理解しております」
- 事実:「現状はこうです」
- 条件:「当施設で対応できる範囲はここまでです」
- 代替案:「代わりにこの形なら可能です(頻度・方法・項目の調整)」
- 合意:「今後はこのルールで進めます」
「気持ち」で押し返すと長期戦になります。ルールと代替案で、関係性を壊さずに整えるのが現実的です。
テンプレ:定期連絡の例文(短く・誤解を減らす)
定期連絡は“文章の上手さ”より“型”が重要です。例として、短くまとめる形を置いておきます。
今月のご様子のご報告です。体調は大きな変化なくお過ごしです。食事は概ね摂取できています。睡眠は日によって波がありますが、日中の活動参加は増えてきています。最近は○○(具体例)を一緒に取り組まれ、落ち着いたご様子でした。次回面会時に○○をご持参いただけますと助かります。何かご不明点があれば、窓口(○○)までご連絡ください。
まとめ:距離感は“相性”ではなく“設計”で整えられる
家族との距離感が難しいときは、頑張って対応量を増やすより、連絡の種類・頻度・内容・窓口を整える方が結果的にうまくいきます。特に「定期連絡の枠」と「変化連絡の型」ができると、家族の安心と現場の安定が両立しやすくなります。
まずは、連絡を3種類に分けるところから始めてみてください。現場の負担を増やさずに、関係性を整える第一歩になります。