青果や食品の現場で「需要予測」は永遠のテーマです。予測は外れるものだと分かっていても、外れ方が大きいと欠品・廃棄・粗利悪化につながります。特に難しいのが、天候・販促・客数といった“揺れる要因”を、発注にどう織り込むかです。
結論から言うと、需要予測は「当てにいく」よりも、外れても崩れない発注設計に寄せたほうが強いです。この記事では、現場で運用しやすい形で、天候・販促・客数を織り込む考え方を整理します。
需要予測が難しい理由は「要因が独立していない」から
天候が変わると客数が変わり、客数が変わると販促効果も変わる。つまり要因が単独で効くのではなく、絡み合って効くのが難しさです。
- 天候:気温・降雨・湿度・風で「買うもの」が変わる
- 販促:売価・露出・セット提案で「買う量」が変わる
- 客数:曜日・給料日・イベントで「母数」が変わる
このため、完璧な数式よりも、現場で扱えるルールに落とすことが重要です。
まずは基準を作る:予測の土台は「いつもの日」
いきなり天候や販促を入れる前に、まず基準(ベース)を作ります。おすすめは、次の3つだけで土台を作る方法です。
- ① 曜日:曜日ごとの売れ方のクセをベースにする
- ② 直近実績:直近2〜4週の平均(または中央値)を基準にする
- ③ 季節:月・旬の影響をざっくり反映する
この「いつもの日」を基準にして、そこから天候・販促・客数の補正を足すと、現場で説明がつきやすくなります。
天候を織り込む:気温は“商品”に効く、雨は“客数”に効く
天候は一括りにせず、影響の出方を分けて考えると扱いやすいです。
気温:売れる商品の“構成”が変わる
気温は「客数」よりも「何が売れるか」に効きやすい傾向があります。暑い日はさっぱり系、寒い日は鍋・煮込み系、といった具合です。ポイントは、すべての品目に反映しないことです。
- 対象を絞る:気温の影響を受けやすい品目だけ補正する
- 補正は段階で:例:平年比+3℃以上/−3℃以下でルール化する
雨・雪:客数が落ちる(ただし買いだめが起きることも)
降雨・積雪は客数に効きやすい一方で、「来店した人が買う量が増える」ケースもあります。ここも品目を分けます。
- 客数連動:総菜・弁当・即食は客数の影響が強い
- 買いだめ連動:日持ち品・冷凍・主食系は増えることがある
- 生鮮:廃棄リスクがあるため、雨の日は“守り”に寄せる
販促を織り込む:値引きより「露出」と「導線」が効く
販促の影響を見誤ると、発注が崩れます。経験的に言うと、値引きだけでなく、露出(見せ方)と導線(売り場配置)が需要に強く効きます。
販促補正は「3点セット」で考える
- ① 価格:売価を下げる・据え置く・上げる
- ② 露出:平台・エンド・目立つ位置で出すか
- ③ 提案:関連購買(鍋セット、サラダ提案など)を組むか
例えば「価格だけ下げる」より、「露出+提案」を組み合わせた方が伸びることは多いです。発注側としては、販促の内容を定義して記録することが大切です(後で再現できるようになります)。
客数を織り込む:客数は“当日”より“前段”で決まる
客数は当日の天候だけでなく、曜日、給料日、学校行事、地域イベントなどで前から決まっている部分が大きいです。客数補正で重要なのは、次の2つです。
- 客数の変化を「%」で扱う
例:通常の客数を100%とし、雨予報の日は95%など - 全品目に掛けない
客数の影響が強い品目(即食・惣菜等)に寄せて補正する
また、客数の変化は「売れ筋の欠品」にも直結します。欠品が出ると機会損失だけでなく、代替購買が起きず客単価も落ちるため、客数が多い日ほど“守るべき品目”を決めておくと強いです。
現実解:予測は外れる前提で「守り」と「攻め」を分ける
需要予測を当てにいくより、外れても崩れない設計にするなら、品目を「守り」と「攻め」に分けるのが有効です。
| 区分 | 特徴 | 発注の考え方 |
|---|---|---|
| 守り(定番・欠品NG) | 欠品が致命的/回転が速い | 欠品を最優先。安全在庫を薄く持つ |
| 攻め(販促・旬・提案品) | 伸びるがブレる/廃棄リスク | 小さく始めて追加発注で追う |
攻め商品は「売り切る設計」(陳列量・値引きタイミング・転用先)もセットで作ると、発注が安定します。
運用で効く:入力項目を増やさない“記録”の仕方
予測精度が上がらない現場の共通点は「記録が続かない」ことです。続けるコツは、記録項目を増やさないこと。最低限、次の3つだけ残すだけでも、次回の予測が楽になります。
- 天候:平年比(暑い/寒い)+雨(有/無)だけ
- 販促:価格/露出/提案の有無(○×)
- 結果:欠品(○×)と廃棄(多/少)
数値を細かく残すより、「状況と結果」を一定の型で残す方が、現場では回りやすいです。
まとめ:当てるより、外れても崩れない設計へ
天候・販促・客数を需要予測に織り込むときは、完璧な予測よりも、基準(いつもの日)+補正(影響が大きい品目だけ)の形が現実的です。さらに「守り」と「攻め」を分け、攻めは追加発注や売り切り設計で吸収する。これが、欠品と廃棄の両方を減らす近道になります。
まずは、気温・雨・販促内容を“型”で記録し、次回の発注に活かすところから始めてみてください。積み上げるほど、現場の勘が「再現できるルール」に変わっていきます。