2026.01.16 地域

連携が続くコミュニケーション:農家と支援側の“言語化ルール”

農福連携で「連携が続かない」原因は、気持ちや相性よりも、実は“言葉にしていない前提”にあることが多いです。農家側は「これくらい当然」と思っていることが、支援側には伝わっていない。支援側は「配慮したつもり」でも、農家側には不足に見える。こうしたズレが積み重なると、現場が疲れて連携が止まります。

そこで効くのが、言語化ルールです。ルールは難しいものではなく、「何を、どの順番で、どの粒度で言うか」を決めるだけです。この記事では、連携を“続く形”にするための言語化ルールと、すぐ使えるテンプレをまとめます。

連携が止まりやすいのは「言葉が足りない」から

連携が詰まる典型は次の3つです。

  • 曖昧な言葉:「適当で」「いつもの感じで」「なるべく早く」など、解釈が割れる
  • 基準の未共有:良品/規格外/許容範囲、完了条件が人によって違う
  • 変更が伝わらない:天候・収穫量・人員で条件が変わったのに、前提のまま進む

逆に言えば、ここをルール化すれば、相性に依存せずに連携が安定します。

農家×支援側の「言語化ルール」7つ

ルール1:最初に“事実”を言う(感想は後)

「大変でした」「うまくいかなかった」より先に、数と状態を置きます。事実が揃うと、原因と対策が早く決まります。

  • 例:×「今日は難しかったです」
  • 例:○「A工程は30分遅れ、完了は12:40でした。B工程は良品率が体感で下がりました」

ルール2:曖昧語を禁止して“置き換え表現”にする

曖昧語を使うなら、数・期限・判断条件に置き換えます。

言いがちな言葉置き換え(例)
なるべく早く「今日の15:00まで」「収穫後2時間以内」
いつも通り「箱は10kg、緩衝あり、ラベルは右上」
適当に「○cm以上は良品」「傷はこの程度までOK」
多めに「+10%」「+2ケース」

ルール3:5W1H+完了条件(Done)を必ず付ける

依頼は「何をしてほしいか」だけでなく、「どこで完了か(検収の形)」まで言います。

  • When:いつ(締切)
  • Where:どこで(場所)
  • Who:誰が(担当の窓口)
  • What:何を(作業)
  • How:どうやって(手順・注意)
  • How many:いくつ(数量)
  • Done:完了条件(見本・基準・置き場)

ルール4:基準は「文章」より「見本・写真」

規格・傷・汚れなどの判断は文章だけでは揃いません。良品/NGの見本(写真)を共有し、「このレベルはOK」「ここからNG」を固定します。これだけで不一致が大幅に減ります。

ルール5:変更が出たら“変更点だけ”を短く通知する

変更連絡は長い説明より、差分の提示が伝わります。

【変更】本日、雨のため収穫量が減ります。A品目は通常の70%見込みです。作業は「袋詰め→箱詰め」を優先し、B工程は中止します。連絡は12:00に再更新します。

ルール6:指摘は「観測→影響→提案」で言う(責任探しをしない)

クレームや不具合が出たとき、責任の話から入ると続きません。言い方の型を固定します。

  • 観測:何が起きたか(事実)
  • 影響:現場に何が起きたか(時間、品質、手戻り)
  • 提案:次回こうすると防げる(具体)

ルール7:窓口は1本、返答期限もセットにする

誰に言えば良いかが曖昧だと、情報が分散し、返答がブレます。窓口を一本化し、「何分以内に返すか」も決めると不安が減ります。

  • 例:作業指示・変更:農家側窓口A/支援側窓口B
  • 例:緊急時:電話、通常:チャット、返答目安:30分以内

すぐ使えるテンプレ(このまま貼って運用できます)

テンプレ1:作業依頼メッセージ

【依頼】(品目/工程)
When:本日15:00まで
Where:作業場A(入口右の台)
What:袋詰め→ラベル貼り→箱詰め
How:見本写真の通り。傷はレベル2までOK。計量は1袋200g。
How many:100袋(10箱分)
Done:完成品は「出荷棚B」に10箱。ラベルは右上。
確認事項:不足資材があれば12:00までに連絡ください。

テンプレ2:変化(いつもと違う)連絡

【変化】(品目/工程)
事実:本日、気温上昇でC品目が柔らかめです(朝の段階)。
影響:通常基準だと良品率が下がる可能性があります。
提案:①選別基準を一段緩める ②出荷を前倒しする ③加工回しを増やす、のいずれかを選びたいです。
期限:10:30までに方針決定したいです。

テンプレ3:品質トラブル(傷み・潰れ等)報告

【品質報告】(品目)
症状:潰れ(下段中心)/汁漏れあり(写真添付)
発生日:○月○日 便:○○ 数量:○箱中○箱
仮説:荷重集中 or 隙間による当たり傷の可能性
次回対策案:①段積み上限を○段に ②緩衝を追加 ③箱内隙間を減らす詰め方へ
確認:現場側で当日の積み付け条件(高さ・固定)を確認可能でしょうか

運用を安定させる「ミーティング設計」

言語化ルールは、頻度を決めると回りやすいです。おすすめは次の最小セットです。

  • 朝5分:今日の量/優先工程/注意点(天候・熟度・人員)
  • 終了前3分:実績(数量・遅れ・詰まり)と明日の懸念
  • 週1回15分:品質・手戻り・作業時間を振り返り、基準(写真)を更新

よくある失敗と、避けるための一言

  • 失敗:「急ぎです」だけで依頼する
    回避:「何時まで」「何を優先」「どこで完了」を必ず付けます
  • 失敗:基準が人によって違う
    回避:良品/NGの写真を更新し、文章は補助にします
  • 失敗:トラブルが“責任探し”になる
    回避:観測→影響→提案の順に固定します

まとめ:続く連携は「言い方」ではなく「型」で作れます

農家と支援側の連携を続ける鍵は、丁寧さよりもズレない言語化です。事実→基準→完了条件、変更は差分、指摘は観測→影響→提案。これらを型にして運用すると、相性に依存せず、現場が疲れにくくなります。

まずは今日から、「依頼テンプレ」「基準の写真化」の2つだけでも導入してみてください。連携の摩擦が目に見えて減っていきます。