2026.01.20 流通

輸入野菜 vs 国産:リードタイムと為替で“見えないコスト”が増える

輸入野菜と国産野菜は、単純に「単価」だけで比べると判断を誤りやすいテーマです。特に見落とされやすいのが、リードタイム(調達〜納品までの時間)為替が引き起こす“見えないコスト”です。価格表には出にくいのに、欠品・廃棄・作業負荷・粗利に効いてきます。

この記事では、輸入 vs 国産を「良し悪し」で語るのではなく、調達現場で意思決定しやすいように、見えないコストの増え方を分解して整理します。

まず前提:比較すべきは“単価”ではなく“総コスト(TCO)”

輸入野菜が安く見える場面はありますが、調達としては総コスト(TCO:Total Cost of Ownership)で見るほうが事故りにくいです。総コストには、次のようなものが含まれます。

  • 商品代(仕入単価)
  • 物流費(国際輸送・国内配送)
  • 在庫コスト(滞留・保管・資金拘束)
  • 品質コスト(傷み・歩留まり・クレーム対応)
  • 運用コスト(検品・再仕分け・調整発注)
  • リスクコスト(欠品・遅延・相場変動)

リードタイムが長いほど“調整の余地”が減る

輸入は一般的に、国産に比べてリードタイムが長くなりやすいです(生産地〜港〜通関〜国内配送の工程が増えるため)。リードタイムが長いと、次のような見えないコストが増えます。

1)需要予測が外れたときのダメージが大きい

リードタイムが短い国産は、ある程度「売れ行きを見て追発注・調整」が可能ですが、輸入は発注時点で未来を決める割合が大きくなります。結果として、

  • 欠品したとき:代替調達が間に合わず機会損失
  • 余ったとき:廃棄・値引き・加工回しで粗利が削れる

2)安全在庫が必要になり、資金と保管が増える

遅延リスクを吸収するために、安全在庫を厚くすると、見えないコストが増えます。

  • 資金拘束:在庫にお金が寝る
  • 保管負担:冷蔵スペース・管理工数が増える
  • 鮮度劣化:滞留が長いほど歩留まりが落ちる

3)品質の“当たり外れ”が出たときに取り返しにくい

長い輸送・滞留の間に、温度変動や振動、結露などの影響が重なると、品質がブレやすくなります。国産も品質課題はありますが、輸入は発見した時点で巻き戻せないケースが増えます(ロットが大きく、代替も遅い)。

為替が効くのは“仕入単価”だけではありません

為替(円安・円高)の影響は、仕入単価の上下だけに見えますが、実務ではもっと広く効きます。代表的な“見えないコスト”を分解します。

1)原価が動くと、販促・価格設定が不安定になる

為替で原価が振れると、売価や販促計画が組みにくくなります。結果として、

  • 売価据え置き:粗利が削れる
  • 売価転嫁:売れ筋の失速や代替品への流出が起きる
  • 販促延期:売場計画の再調整コストが増える

2)輸送費・資材費も連動して上がりやすい

国際物流は、市況や燃料、資材など複数要因で動きます。為替の変動と重なると、見積がぶれやすく、契約条件によっては後からコストが乗る形になりやすいです。

3)ヘッジや契約条件が“運用コスト”になる

為替リスクを抑えるために、固定レートや先物的な契約、価格改定条項などを入れると、リスクは減る一方で、社内調整や契約管理のコストが増えます。つまり、為替リスクは「ゼロ化」ではなく、どこで誰が負担するかの設計になります。

輸入の見えないコストが“表に出る”瞬間

次のタイミングで、見えないコストが一気に表面化しやすいです。

  • 天候・相場が荒れた週:需要が読めず、欠品か余剰が出る
  • 販促週:想定より伸びた/伸びなかったの調整が効かない
  • 品質クレーム発生時:ロットが大きく、原因切り分けと再発防止に時間がかかる
  • 円安が進行した局面:仕入単価だけでなく、物流・資材・運用が同時に上がる

現実的な結論:輸入と国産は“役割分担”が強い

輸入と国産は、どちらが正解というより、目的に応じた役割分担が現実的です。たとえば、次のように分けると設計しやすくなります。

目的向きやすい考え方注意点
安定供給(年間の平準化)輸入をベースにする為替・物流の変動を前提に「条件」を整える
鮮度・短サイクル調整国産を厚めにする産地切替のタイミングで品質・規格が変わる
販促(伸びるがブレる)国産で調整幅を確保追発注・欠品回避の段取りが必須
コスト最適化(TCO)輸入+国産のハイブリッド切替ルール(いつ何に替えるか)を先に決める

見えないコストを減らす「チェック項目」

最後に、調達判断の精度が上がるチェック項目を置きます。単価比較だけで決める前に、これだけ確認すると事故が減ります。

  • リードタイム:発注〜納品まで何日か(変動幅も含む)
  • 最小ロット:余剰が出たときの逃げ道(加工回し・値引き)
  • 欠品時の代替:国産切替の条件、代替品の候補はあるか
  • 品質基準:規格・許容範囲・検収方法(写真基準があると強い)
  • 温度帯・梱包:輸送中のリスク(結露・圧迫・振動)を吸収できるか
  • 為替条項:価格改定のルール(いつ、何を基準に、どう反映)
  • 総コスト:物流・保管・作業・クレーム対応まで含めて見積れるか

まとめ:輸入は「安さ」より「設計」が問われる

輸入野菜は、条件が噛み合えば強い選択肢ですが、リードタイムと為替の影響で、単価の裏に“見えないコスト”が増えやすいのも事実です。だからこそ、比較は単価ではなく総コストで行い、欠品・余剰・品質ブレが起きても崩れないように、ロット・代替・契約条件を先に設計することが重要です。

まずは、対象品目を1つに絞り、「リードタイム」「最小ロット」「為替条項」「代替ルール」を言語化してみてください。見えないコストが可視化され、判断が一段ラクになります。