輸入野菜と国産野菜は、単純に「単価」だけで比べると判断を誤りやすいテーマです。特に見落とされやすいのが、リードタイム(調達〜納品までの時間)と為替が引き起こす“見えないコスト”です。価格表には出にくいのに、欠品・廃棄・作業負荷・粗利に効いてきます。
この記事では、輸入 vs 国産を「良し悪し」で語るのではなく、調達現場で意思決定しやすいように、見えないコストの増え方を分解して整理します。
まず前提:比較すべきは“単価”ではなく“総コスト(TCO)”
輸入野菜が安く見える場面はありますが、調達としては総コスト(TCO:Total Cost of Ownership)で見るほうが事故りにくいです。総コストには、次のようなものが含まれます。
- 商品代(仕入単価)
- 物流費(国際輸送・国内配送)
- 在庫コスト(滞留・保管・資金拘束)
- 品質コスト(傷み・歩留まり・クレーム対応)
- 運用コスト(検品・再仕分け・調整発注)
- リスクコスト(欠品・遅延・相場変動)
リードタイムが長いほど“調整の余地”が減る
輸入は一般的に、国産に比べてリードタイムが長くなりやすいです(生産地〜港〜通関〜国内配送の工程が増えるため)。リードタイムが長いと、次のような見えないコストが増えます。
1)需要予測が外れたときのダメージが大きい
リードタイムが短い国産は、ある程度「売れ行きを見て追発注・調整」が可能ですが、輸入は発注時点で未来を決める割合が大きくなります。結果として、
- 欠品したとき:代替調達が間に合わず機会損失
- 余ったとき:廃棄・値引き・加工回しで粗利が削れる
2)安全在庫が必要になり、資金と保管が増える
遅延リスクを吸収するために、安全在庫を厚くすると、見えないコストが増えます。
- 資金拘束:在庫にお金が寝る
- 保管負担:冷蔵スペース・管理工数が増える
- 鮮度劣化:滞留が長いほど歩留まりが落ちる
3)品質の“当たり外れ”が出たときに取り返しにくい
長い輸送・滞留の間に、温度変動や振動、結露などの影響が重なると、品質がブレやすくなります。国産も品質課題はありますが、輸入は発見した時点で巻き戻せないケースが増えます(ロットが大きく、代替も遅い)。
為替が効くのは“仕入単価”だけではありません
為替(円安・円高)の影響は、仕入単価の上下だけに見えますが、実務ではもっと広く効きます。代表的な“見えないコスト”を分解します。
1)原価が動くと、販促・価格設定が不安定になる
為替で原価が振れると、売価や販促計画が組みにくくなります。結果として、
- 売価据え置き:粗利が削れる
- 売価転嫁:売れ筋の失速や代替品への流出が起きる
- 販促延期:売場計画の再調整コストが増える
2)輸送費・資材費も連動して上がりやすい
国際物流は、市況や燃料、資材など複数要因で動きます。為替の変動と重なると、見積がぶれやすく、契約条件によっては後からコストが乗る形になりやすいです。
3)ヘッジや契約条件が“運用コスト”になる
為替リスクを抑えるために、固定レートや先物的な契約、価格改定条項などを入れると、リスクは減る一方で、社内調整や契約管理のコストが増えます。つまり、為替リスクは「ゼロ化」ではなく、どこで誰が負担するかの設計になります。
輸入の見えないコストが“表に出る”瞬間
次のタイミングで、見えないコストが一気に表面化しやすいです。
- 天候・相場が荒れた週:需要が読めず、欠品か余剰が出る
- 販促週:想定より伸びた/伸びなかったの調整が効かない
- 品質クレーム発生時:ロットが大きく、原因切り分けと再発防止に時間がかかる
- 円安が進行した局面:仕入単価だけでなく、物流・資材・運用が同時に上がる
現実的な結論:輸入と国産は“役割分担”が強い
輸入と国産は、どちらが正解というより、目的に応じた役割分担が現実的です。たとえば、次のように分けると設計しやすくなります。
| 目的 | 向きやすい考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 安定供給(年間の平準化) | 輸入をベースにする | 為替・物流の変動を前提に「条件」を整える |
| 鮮度・短サイクル調整 | 国産を厚めにする | 産地切替のタイミングで品質・規格が変わる |
| 販促(伸びるがブレる) | 国産で調整幅を確保 | 追発注・欠品回避の段取りが必須 |
| コスト最適化(TCO) | 輸入+国産のハイブリッド | 切替ルール(いつ何に替えるか)を先に決める |
見えないコストを減らす「チェック項目」
最後に、調達判断の精度が上がるチェック項目を置きます。単価比較だけで決める前に、これだけ確認すると事故が減ります。
- リードタイム:発注〜納品まで何日か(変動幅も含む)
- 最小ロット:余剰が出たときの逃げ道(加工回し・値引き)
- 欠品時の代替:国産切替の条件、代替品の候補はあるか
- 品質基準:規格・許容範囲・検収方法(写真基準があると強い)
- 温度帯・梱包:輸送中のリスク(結露・圧迫・振動)を吸収できるか
- 為替条項:価格改定のルール(いつ、何を基準に、どう反映)
- 総コスト:物流・保管・作業・クレーム対応まで含めて見積れるか
まとめ:輸入は「安さ」より「設計」が問われる
輸入野菜は、条件が噛み合えば強い選択肢ですが、リードタイムと為替の影響で、単価の裏に“見えないコスト”が増えやすいのも事実です。だからこそ、比較は単価ではなく総コストで行い、欠品・余剰・品質ブレが起きても崩れないように、ロット・代替・契約条件を先に設計することが重要です。
まずは、対象品目を1つに絞り、「リードタイム」「最小ロット」「為替条項」「代替ルール」を言語化してみてください。見えないコストが可視化され、判断が一段ラクになります。