2026.02.06 流通

品種が変わると流通が変わる:日持ち・硬さ・サイズの設計思想

野菜の「品種違い」は、味の違いだけではありません。実務ではむしろ、流通が変わるほうがインパクトが大きいです。同じトマト、同じレタスでも、品種が変わるだけで日持ち、硬さ、サイズが変わり、梱包・輸送・店頭管理・クレーム率まで動きます。

この記事では、品種が流通に与える影響を「日持ち」「硬さ」「サイズ」の3軸で分解し、流通側(卸・小売・EC)が品種をどう見ているのか、設計思想として整理します。

前提:品種は“味”と同時に“物流スペック”でもある

品種選びは、生産者にとっては収量や作りやすさの問題になりがちですが、流通側は別の目線も持っています。それが、物流スペックです。

  • 日持ち:何日持つか(廃棄率と直結)
  • 硬さ:輸送中に潰れないか(クレーム率と直結)
  • サイズ:規格に乗るか(作業効率と直結)

つまり品種は、「美味しさの設計」と同時に「事故を減らす設計」でもあります。

日持ちが変わると、発注と在庫が変わる

日持ちが長い品種は、流通にとって“守り”になります。逆に日持ちが短い品種は、計画とスピードが必須になります。

日持ちが長い品種が向く場面

  • 遠距離流通:輸送時間が長い(翌々日以降の着荷)
  • 店舗数が多い:配分・店間移動が発生しやすい
  • 週末需要:平日に仕込んで週末に売る
  • EC:不在・再配達などのリスクを吸収したい

日持ちが短い品種が向く場面

  • 地産地消:短距離で回せる(鮮度で勝負できる)
  • 直売・飲食:回転が早く、使い切れる
  • “旬”の打ち出し:期間限定で価値を出せる

日持ちが短い品種は「鮮度で勝てる」一方で、発注を外すとロスが大きくなります。流通としては、日持ち=在庫の許容範囲として見ています。

硬さが変わると、梱包とクレームが変わる

硬さ(物理的な強さ)は、輸送事故の確率を左右します。特にECや混載便では、硬さの差がそのままクレーム率に繋がりやすいです。

硬い品種が持つメリット

  • 潰れにくい:当たり傷が減り、返品・値引きが減る
  • 作業性が良い:詰め替え・陳列時の破損が減る
  • 遠距離に向く:輸送段数が増えても耐える

硬さの注意点

  • 硬い=美味しい、ではない(食感の好みが分かれる)
  • 追熟を前提とする品目は、硬さと食べ頃の設計が必要
  • 硬さがあっても、温度管理が崩れると一気に劣化する

流通側が硬さを重視するのは、味より先に「事故が起きるかどうか」が利益に直撃するからです。硬い品種は、“物流の保険”になります。

サイズが変わると、規格・作業・売り方が変わる

サイズは、最も分かりやすく流通に効きます。サイズが揃うほど、作業は速く、ロスは減ります。一方で、サイズがバラつくと、現場の作業負荷とクレームの種が増えます。

サイズが揃うと起きること

  • 選別が楽:規格箱に乗りやすい
  • 陳列が速い:売場が整う
  • 価格が作りやすい:売価設計が安定する
  • 加工がしやすい:カット・調理の歩留まりが安定する

サイズが揃わないと起きること

  • 作業が増える:袋詰め・ラベルが手間になる
  • 欠品と余剰が同時に起きる:欲しいサイズが足りない/別サイズが余る
  • 売り方が難しい:大玉・小玉で用途が変わり、説明が必要になる

サイズは「消費者の使いやすさ」にも直結します。流通側は、サイズを“用途の設計”としても見ています(例:サラダ向け、小分け向け、業務用向けなど)。

結局、流通が求めるのは「再現性」

日持ち・硬さ・サイズの共通点は、どれも再現性につながることです。流通は、味が良いだけでは回せません。毎週、毎日、同じ品質で回ることが価値になります。

流通目線での“品種の設計思想”

  • 日持ち:在庫の許容範囲を広げる
  • 硬さ:輸送事故とクレームを減らす
  • サイズ:作業効率と売価設計を安定させる

この3点が揃うほど、仕入れ先として選ばれやすくなります。

実務で役立つ:品種切替時に確認したいチェックリスト

品種を切り替えるとき、現場で事故を減らすために、最低限この項目を確認すると強いです。

  • 日持ち:想定流通日数(収穫→納品→売場)に耐えるか
  • 硬さ:箱内での当たり傷が増えないか(試験出荷で検証)
  • サイズ:規格箱・袋規格・売場什器に合うか
  • 温度帯:冷蔵・常温のどちらで運用するか
  • 歩留まり:選別ロス・加工ロスが増えないか
  • 説明:売場POPやECページで「用途」を言えるか

まとめ:品種は“物流の仕様書”でもある

品種が変わると、味の話だけでなく、流通全体の設計が変わります。日持ちが変われば発注と在庫が変わり、硬さが変われば梱包とクレームが変わり、サイズが変われば作業と売り方が変わります。

流通に強い品種とは、必ずしも“無難”という意味ではなく、再現性と運用性が高いということです。もし品種の採用や切替を検討しているなら、味に加えて「日持ち・硬さ・サイズ」の3点を、物流スペックとして見てみてください。判断が一段クリアになります。