野菜をECで売ると、売り方が変わるだけではありません。物流そのものが「別物」になります。特に変化が大きいのが、ラストワンマイル(最終配送)です。店舗納品や業務用卸では表に出にくかったリスクが、ECでは一気に顕在化します。
この記事では、野菜ECで起きがちなラストワンマイルの落とし穴を、実務目線で整理します。失敗しやすいポイントを先に押さえることで、クレーム・返品・赤字化を減らしやすくなります。
なぜECは物流が難しくなるのか
店舗納品(B2B)は「一定量をまとめて」「受け取り体制がある場所」に届けます。一方、EC(B2C)は「少量を」「住所が分散した個人宅」に届けます。これだけで難易度が跳ね上がります。
- 小口化:1件あたりの単価が小さく、梱包・配送コスト比率が高い
- 住所分散:積み込み・配達の効率が落ちやすい
- 受け取り不確実:不在・置き配・宅配ボックスなど条件がバラバラ
- 温度の影響:「配送の途中」と「玄関先」で品質が落ちやすい
ラストワンマイルの落とし穴①:不在が“品質事故”になる
野菜は温度と時間の影響を受けます。ECでは、配達できずに持ち戻り・再配達になるだけで、品質低下が起きやすくなります。つまり、再配達は「コスト増」だけでなく「事故率増」でもあります。
対策:受け取り前提を“設計”する
- 日時指定を基本にする:指定なしを減らすだけで事故率が下がる
- 発送前リマインド:発送通知+受け取り注意(夏場は特に)
- 置き配の扱いを明確化:可否、品質保証範囲、クール便との整合
落とし穴②:玄関先の数十分が致命傷になる(夏・冬)
冷蔵庫に入る前、玄関先や宅配ボックスで放置される時間が、品質に直撃します。とくに夏は温度上昇、冬は凍結リスクがあり、どちらもクレームの温床になります。
対策:商品ページと同梱物で“行動”を促す
- 商品ページ:「到着後はすぐ開封・冷蔵」など一文を固定
- 同梱カード:保存方法、食べ頃、温度注意を短く明記
- 季節で運用を変える:夏はクール便比率を上げ、冬は凍結しやすい品目を避ける
落とし穴③:梱包が“輸送品質”を決める
ECは荷姿が小さく、箱の中で野菜が動きやすいです。さらに、個人宅配送では荷扱いが多段階になり、振動・落下・荷重の影響を受けやすくなります。梱包は見た目以上に、品質の勝負どころです。
よくある失敗
- 箱内に隙間があり、当たり傷が増える
- 重い根菜が上から乗り、葉物や柔らかい野菜が潰れる
- 結露で濡れ、カビ・異臭につながる
対策:箱内の「荷重設計」と「水分設計」
- 重いものは下:じゃがいも、玉ねぎなどは下段へ
- 潰れやすいものは保護:葉物、トマト等は緩衝と固定を厚めに
- 隙間を減らす:動かない状態を作る(紙・緩衝材の使い方が重要)
- 結露対策:温度差を前提に、吸湿材・通気・包材を調整
落とし穴④:クール便は万能ではない(コストとリスク)
「全部クール便にすれば安心」と思われがちですが、クール便はコストが上がるだけでなく、凍結・結露・温度ムラの課題もあります。また、配送会社の条件(サイズ、締切、地域)で制約が出ます。
対策:品目ごとに温度帯を分ける
- 冷蔵向き:葉物、カット野菜に近い性質のもの、夏場の柔らかい品目
- 常温向き:根菜、かぼちゃ等(季節・気温で変える)
- 混載注意:同梱すると事故る組み合わせを避ける(温度・湿度・エチレン等)
落とし穴⑤:返品・再送のルールがないと赤字が増える
ECでは、品質クレームが発生したときの対応が、そのまま利益を削ります。ルールが曖昧だと、現場判断がブレて再送・返金が増え、赤字化しやすくなります。
対策:最初に決めるべき3点
- 保証範囲:どの状態なら返金/再送か(写真必須など)
- 連絡期限:到着後何時間・何日以内に連絡か
- 例外条件:受け取り遅延(不在・放置)時の扱い
クレーム対応は“優しさ”だけで設計すると、長期的に続きません。お客様に誠実でありつつ、運用として回るルールが必要です。
現実解:野菜ECは「商品」より先に「運用」を作る
野菜ECの難しさは、味や見た目よりも、受け取り・梱包・温度・再配達にあります。つまり、売れる前に事故る。これがラストワンマイルの本質です。
最初に整えると強い“運用セット”
- 日時指定・発送通知の設計
- 品目別の温度帯ルール(常温/冷蔵)
- 箱内の荷重設計(重い下・柔らかい上・固定)
- 同梱カード(保存・食べ方・注意点)
- 返品・再送の基準とフロー
まとめ:ラストワンマイルは“見えない工場”
ECのラストワンマイルは、実質的に「品質を左右する工程」です。受け取りの不確実性、温度変動、再配達、箱内ダメージ——これらを前提に設計しないと、クレームと赤字が増えます。
逆に言えば、運用を先に整えれば、野菜ECは安定しやすくなります。まずは、日時指定の徹底と梱包の荷重設計の2点から取り組んでみてください。事故率が目に見えて変わります。