2025年3月、日本農福連携協会が「企業版 農福連携取組事例集」を公開しました。その中心には、7社が名を連ね、農業を通じた障がい者雇用の新たな可能性を切り拓いています。
1. ハートランド(大阪・泉南市)
地域産品を活用した6次産業化に注力。JA婦人部の継承事業として“幻の唐辛子”を配合した「まめなかな味噌」を開発し、JA直売所で販売。JA職員や地域の特別支援学校も巻き込むことで、障がい者の安定雇用と地域交流を両立しています。
2. 帝人ソレイユ(千葉・我孫子市)
企業版事例集に名を連ね、福祉分野の知見を農作業に活かす取り組みを実践。障がい特性に応じた現場設計を行い、安定雇用を実現しています。
3. 中電ウイング(岐阜・可児市)およびJX金属コーポレートサービス(茨城・水戸市)
中電ウイング、生産現場での就労支援を。またJX金属は「内原ファーム」を設立し、社内研修や社食利用、コーヒー粕再利用を含む循環型農業モデルを展開。
4. 電通グループ農福連携コンソーシアム(東京・世田谷)
複数企業が連携。知見や支援体制を共有し、農福連携の裾野拡大と品質担保の両立を図っています。
5. パーソルダイバース(神奈川・横須賀市)
「よこすか・みうら岬工房」を拠点に、農作業を通じた障がい者支援。職場環境を工夫し定着率も高く、企業としての多様性推進に好適なモデルです。
6. JAぎふはっぴぃまるけ(岐阜市)
JA女性部と連携し、味噌加工や苗育成など、6次産業化に力を入れています。地域特別支援学校との協働で実践的な雇用機会を提供。
注目ポイント:企業版農福連携の深層
A. CSR・DEIの実践としての農福
企業にとって、障がい者雇用の文脈に農業を加えることは、社会課題解決×ビジネス価値の同時実現策。製品開発や社内食堂への素材活用など、CSR/CSV経営のひとつの具体戦略です。
B. 現場設計と定着支援が成功の鍵
パーソルやJAぎふは、障がい特性に配慮した職場づくり、研修制度やICT活用により、離職率の低減に成功。定着を意識した仕組みづくりこそ企業の差別化ポイントです。
C. 循環型農業で社内外への波及効果
JX金属の「内原ファーム」では、社内教育と地域還元、資源再利用のサイクルが構築され、「農」と「企業」そして「福祉」が一体化したモデルとして注目。
社会的成果と今後の展望
農林水産省の最新資料によれば、ノウフク連携に携わる障がい者数は2018年から122人増の428人。さらに一般就労移行も進んでおり、年間22団体がノウフク・アワードで表彰されています。この流れは、企業参入による雇用安定と事業推進力の確保に大きく寄与しています。
企業だからできる農福連携のかたち
企業版農福連携は、単なる雇用創出に留まらず、製品化、社内啓発、地域貢献という多面的な価値を生み出す戦略です。特に次世代の働き方改革やサステナビリティ経営を求める企業にとって、このモデルは「持続可能な未来」を描くうえで欠かせない選択肢といえるでしょう。