農と福祉の融合──自治体が主導する農福連携が、2025年現在、確かな実績を上げ始めました。福岡市と北海道恵庭市の具体的な取り組みを通じ、その秘訣と波及力を深掘りします。
① 福岡市:行政+農家+福祉事業所の三位一体モデル
自治体支援の全貌
福岡市は、農福連携の拡大を目的に、福祉事業所の職員向け農業研修や農福アドバイザー派遣を実施。加えて実践現場のインタビュー・作業紹介動画も2本制作し、導入支援のノウハウ公開に力を注いでいます。
馬場ファームとの連携
早良区の馬場ファームでは、除草、袋詰め、配送といった軽作業を障がい福祉事業所へ委託。連携飲食店では、地元産「カリーノケール」をメニュー採用し、消費者へのPRにも一役買っています。
JA選果場との協働
元岡トマト選果場では、障がい者に箱折り作業を委託。これによりパートの時間が浮き、他の工程へシフト可能に。農家・JA・福祉の三者協力型モデルが成果を可視化しています。
② 恵庭市:動画×QRで「見える」成功事例集
事例集の進化
恵庭市は2019年に「成功事例集(作業工程マニュアル)」を発行以来、毎年改訂。最新版では作業手順・工賃・難易度などをまとめ、QRコードから動画リンクへ飛べる仕組みを搭載しました。
マニュアルの工夫
動画中心に据え、作業を細分化して具体的に示す構成は、福祉施設・農家双方から高評価。写真のクローズアップや注意点の明示も行いやすさに貢献しています。
地域協議会の設置
恵庭市では、福祉・農政・農業者が集う「農福連携ネットワーク」を設立。農作業実習から継続雇用まで、体系的に支援する体制を築いています。
今後の展望とメッセージ
モデル化と横展開
これらの自治体モデルをベンチマークとして、全国各地が導入しやすいように標準化・デジタル共有が進むでしょう。
DXの活用と連携深化
福岡のようなピーマン収穫ロボット遠隔操作など、テクノロジーと農福連携が融合すれば、さらに支援の幅が広がります。
参加者視点の強化
恵庭市のようにわかりやすく、使いやすいマニュアル整備が、農家・施設の実務負担軽減に直結します。
地域が動けば、農福の未来が開く
福岡市と恵庭市は、行政が率先して支援体制を整え、見える化・ノウハウ提供に注力したことで、農福連携の「成功モデル」を具体化しました。
既に実践している自治体にとってはベンチマークとなり、これから始める地域にとっては「やってみよう」と背中を押す事例です。農福連携は、農業担い手不足や福祉課題の解決に、地域を巻き込む力を持つ取り組み。今後、全国の自治体がこの動きを続けることで、“誰もが活躍できる持続可能な農と福祉の社会”が着実に現実になるでしょう。