2025.06.17 コラム

「断らない」農福が地域を変える – 地域密着モデルの最前線

日本各地では、農業の人手不足と福祉の雇用ニーズのクロスオーバーが進行中。その中で「断らない」を合言葉に掲げる地域密着型モデルは、実践者の強い覚悟と地元に根差した支援体制によって、着実に成果を上げています。

① 高知県:Iターン者が旗を振る“こうち絆ファーム”

高知県安芸市で立ち上がった「こうち絆ファーム」は、Iターン就農者が中心となり、障がい者や生きづらさを抱えた人々にも門戸を開く就労支援型農園です。北村浩彦代表曰く、

「農も福祉も“断らない”がモットー」

2020年のB型事業所設立以降、農地面積は10アールから33アールへ拡大。JAや行政も含めた支援会議を通じ、マッチングから定着支援まで切れ目ない関係を築いています。

② 浜松市:IT企業系特例子会社「CTCひなり」の挑戦

静岡・浜松市では、CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)の特例子会社であるCTCひなりが農福連携を推進。2025年4月時点で契約農家は7軒、スタッフ38名が農作業を担い、ジョブサポーターとともに現場に携わっています。

この「ひなりモデル」では、農作業に応募のある場所をテレワークのように評価。京丸園では空調設備の設置により収穫時間が8時間から4時間に短縮されたといいます

地域社会に与える広がりと今後の展望

  • 人材不足の根本解決
    高齢化や後継者不足が叫ばれていた農村で、障がい者就労による“安定した担い手”の確保が可能になっています。
  • 福祉の自立支援
    “働く場”としての農地が、障がいを抱える人にとって自信と社会参加の場に変わっています。
  • 地域循環と経済性
    京丸園のように販路拡大と効率向上を実現することで、福祉だけでなく農業の収益構造も強化。地域資源の循環が進んでいます。

「断らない」が生む地域の可能性

高知・浜松の事例はいずれも、「誰も断らない」という理念が軸となった地域モデルです。行政とJA、さらには企業が“一緒にやる”ことで、農と福祉、そして地域全体がつながる“共創の基盤”が形成されています。

今後、全国の自治体がこのアプローチを取り入れることで、ひとりひとりが活躍できる社会の実現がさらに近づいていくことでしょう。