2025.06.24 コラム

「朝採れ」はどう届く?――野菜の“スピード流通”の裏側

「今朝採れたばかりの新鮮野菜です!」
マルシェや直売所、スーパーでそんな言葉を見かけたことはありませんか? でも実際に、どうやって“朝に採った野菜”が、昼過ぎや夕方には消費者の手元に届くのでしょうか?

その裏には、生産者・集荷・輸送・販売の間を駆け抜ける“スピード勝負”の物流があります。

🕓 4:00〜6:00|まだ暗いうちから始まる収穫作業

朝採れ野菜の第一歩は「早朝の収穫」。
農家さんたちは気温が上がる前、4時台〜6時台にかけて、収穫のピークを迎えます。特に葉物野菜やトマトは、気温が低いうちに収穫することで、鮮度と水分量を保ちやすくなります。

また収穫直後に冷却・水洗・選別までを自ら行う農家も多く、現場はまさに“分刻み”の作業です。

🚛 6:30〜9:00|集荷と出荷、2時間以内のスピード勝負

収穫された野菜は、JA・集荷場・卸売業者・産直センターへと搬入されます。
この「集荷→積み込み→出発」までの時間は1〜2時間以内が勝負。特に「直送型産直」や「契約販売」を行っているところでは、出荷用冷蔵車や集荷便が農家の軒先まで回ることも。

また最近では、地元の複数農家の野菜をまとめてピッキング・梱包し、10時前には都市圏へ向かう出荷を完了する“ミニ物流拠点”も増えています。

🏬 10:00〜14:00|“午前採れ”が午後に店頭に並ぶ理由

午前中に発送された「朝採れ野菜」は、多くの場合その日の午後〜夕方には販売店に到着します。
特に、以下のようなモデルが広がっています。

  • 地元スーパーの産直コーナー
    農家→センター→各店舗へ自社トラック便で配送
  • 道の駅・直売所
    農家が直接持ち込み、10時前後に陳列される
  • 都心マルシェやレストラン
    契約農家が出荷 → 配送会社が当日便で搬入

最近では「朝採れ野菜を15時までにレストランに納品」「朝収穫→午後にマルシェ出店」というモデルも一般化しつつあります。

🧊 鮮度を保つテクノロジーと物流連携

「朝採れ」の価値は、何よりも“鮮度”にあります。
そのためには、以下のような物流技術が欠かせません。

  • 冷蔵・冷風車両(葉物野菜やトマトに最適)
  • 湿度調整付きの保冷箱
  • パッケージ内の鮮度保持フィルム(エチレンガス吸収等)
  • IoT温度モニタリング(輸送中の温度管理)

さらに、地元の青果市場や産直拠点と物流会社(ヤマト運輸・日本通運など)が協業する例も増加。“農の現場”と“流通”の壁を越えた連携が、スピード流通を支えています。

🧑‍🌾 生産者の努力、物流の工夫、そして私たちの「おいしい!」へ

「朝採れ」という言葉の裏には、夜明け前からの作業、生産者と物流の緻密な連携、そして1日のうちに消費者の食卓へ届ける情熱があります。

当たり前に手にするその1本のキュウリ、1個のトマト。
その“鮮度”は、生産と物流が限界まで詰めた「タイムアタック」の結晶なのです。

編集後記

最近は「都市型ミニ物流」や「収穫から6時間以内配送」といった取り組みも注目されています。今後は、さらに地元完結型の流通網やドローン配送なども進むかもしれません。

「朝採れ野菜」、今夜はちょっと違う目で味わってみてはいかがでしょうか?