2025.07.17 コラム

“ただ住む場所”じゃない。暮らしに寄り添うグループホームの設計とは?

グループホームは「住まい」でありながら、単なる“住居”とは異なります。
そこにあるのは、寝泊まりできる「箱」ではなく、“その人らしい暮らし”を支える日常の器です。

では、暮らしに本当に寄り添うグループホームとは、どんな場所なのでしょうか?

間取りよりも「関係性の設計」が大切

グループホームというと、間取りや設備、立地といった「ハード面」に目が行きがちです。もちろん快適な環境は重要ですが、それだけでは「暮らし」は成り立ちません。

たとえば——

  • ひとりで過ごしたい時間も大切にできるよう、共有スペースと個室の距離感を調整する
  • 誰かと何気ない会話が生まれやすいように、キッチンやリビングの動線を工夫する
  • 職員との距離が“近すぎず、遠すぎず”になるよう、スタッフルームの位置を考える

これらはすべて、「物理的な設計」だけでなく「関係性の設計」でもあります。
“誰と、どんな時間を過ごすか”が、そこでの暮らしの質を大きく左右するのです。

「できること」が増える動線

エンパワメントグループのグループホームでは、「利用者の主体性を育む設計」を大切にしています。
職員が“やってあげる”のではなく、“自分でできるようになる”ための導線を意識する。

たとえば、洗濯機の配置ひとつとっても、
「自分で洗濯物を取りに行きやすい」
「干すスペースまでスムーズに移動できる」
といった設計が、“生活力”を育むサポートになります。

自立のゴールは一人ひとり違います。
だからこそ、「できないこと」ではなく「できること」に目を向ける空間づくりが必要です。

安心感は「温度」で伝わる

職員の配置や夜間体制、防災設備など、安全性を高める仕組みは当然必要です。
しかし、それだけでは“安心”は生まれません。

たとえば、

  • 毎朝顔を合わせるたびに交わす「おはよう」
  • 体調が悪そうなときにすぐ気づいてくれる存在
  • ちょっと落ち込んだとき、そっと差し出されるお茶

こうした“人の気配”を自然に感じられる空間こそが、本当の安心につながります。
つまり「安心感」は設計図に描けない、“関係の温度”によってつくられているのです。

おわりに:暮らしの舞台をつくるということ

グループホームは、“生活をする”ための場です。
誰かの「ただいま」があり、「いただきます」があり、「おやすみ」がある。
そうした当たり前の積み重ねが、「暮らし」を形づくっていきます。

エンパワメントグループが目指しているのは、
「ただ住む場所」ではなく、「生きていく場所」。
そのための設計は、図面だけではなく、人の思いや関係性とともにつくられていくものです。