2025.08.04 コラム

オーガニック野菜はなぜ高い?——卸目線で見る価格構造

「オーガニック(有機)野菜は、どうしてこんなに高いの?」
スーパーやマルシェで、一般的な野菜と並んだオーガニック野菜の価格を見て、そう感じたことはありませんか?

“体にいいから高い”というイメージだけでなく、その裏には明確なコスト構造流通上の理由があります。
今回は、青果流通の現場=卸売の立場から、オーガニック野菜が高くなる理由を解説します。

理由①:収穫量が少ない=単価が上がる

オーガニック栽培では、農薬や化学肥料を使わず、自然の力を活かして育てます。
そのため——

  • 病害虫の被害に遭いやすい
  • 生育に時間がかかる
  • 天候の影響を受けやすい
  • 一度に大量に作れない

こうした制約があるため、1反(約1000㎡)あたりの収穫量は慣行農法の半分以下になることも珍しくありません。

収穫量が少なければ、当然1個あたりのコストは上がります。

理由②:手作業が多い=人件費が高い

除草剤を使わないオーガニック農業では、草取りや病害虫の管理を人の手で行う必要があります。
また、種まきや収穫のタイミングも天候や土の状態に応じて細かく調整されるため、作業全体が非常に“手間がかかる”のです。

このように、機械化・効率化が難しい=人手がかかる=人件費がかさむという構造があります。

理由③:検査・認証コストがかかる

「有機JASマーク」などのオーガニック認証を取得・維持するには、農家が定期的な検査や書類管理、認証機関への支払いなどを行う必要があります。

これは完全に“見えないコスト”ですが、流通に乗せるためには欠かせない手続きであり、価格に上乗せされているのです。

理由④:ロス率が高い=売れ残りリスクも高い

オーガニック野菜は傷みやすく、虫の食害も出やすいため、市場に出すと**“見た目”で弾かれる**リスクがあります。

また、需要が限られている地域では、在庫として残りやすいという声も。
卸としては「扱いたいけどロスが怖い」と感じやすい商材でもあり、その分リスク込みで単価が高く設定されやすくなります。

理由⑤:安定供給が難しい=価格変動しやすい

慣行野菜と違って、オーガニック野菜は供給が不安定
産地や天候によって数量が大きく変わるため、少ない時期には価格が高騰します。
また、スーパーや飲食店の“発注どおりに揃える”という流通の基本が難しいため、扱える販路も限られます。

結果として、「高めの価格帯」でバッファを持たせる必要があるのです。

“高い”けど、それには理由がある

オーガニック野菜の価格は、贅沢品としてのプレミアムではなく、

  • 小規模・低収量
  • 手間・人件費
  • 流通の不安定さ
  • 認証維持のコスト

など、積み重なった現実的な理由に支えられています。

おわりに:卸がつなぐ「価値」と「理解」

卸の立場から見ると、オーガニック野菜は「ただ高い商品」ではなく、
つくる人の哲学と苦労が詰まった、丁寧につなぐべき野菜です。

価格の背景にある価値を伝えること。
そして、少しでもロスなく、正当に評価される流通を整えること。
それが、今の卸に求められている役割のひとつだと感じています。