2025.08.09 コラム

農福連携、法律と日常へ

2024年6月、食料・農業・農村基本法が改正され、第46条に「農福連携」が明記されました。
これにより、障害のある人や生きづらさを抱える人々が、その力を発揮できる農業の現場を広げることが、国としての責務として示されたのです。

同時に、国は「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)」を策定し、2030年までに取組主体数を12,000以上へ拡大するという具体的な目標を掲げました。制度としての基盤が固まり、農福連携は全国的な広がりを見せています。

法律が変える“日常”

制度の整備は現場にどのような変化をもたらしているのでしょうか。

たとえば、長野県のJA松本ハイランドでは、障害者就労施設と連携し、延べ1,500人以上が農作業に従事。農家にとっては人手不足解消や収益性の向上につながり、福祉施設にとっては利用者の工賃アップや新たなやりがい創出につながっています。

また、鹿児島県の社会福祉法人・白鳩会では、障害のある人に加え、刑務所出所者や生活困窮者など多様な人を受け入れています。畑を耕し、茶畑の収穫機を操縦し、適性に応じて役割を分担する。そこには「働くことを通じて社会とつながる」日常が生まれています。

こうした事例は、法律や制度が現場に息づき、誰かの生活そのものを変えていることを物語っています。

法と暮らしをつなぐ未来へ

農福連携は、単なる福祉の枠を超えています。
農業は人手不足に悩み、福祉は「働く場」を求めている。両者をつなぐことで、地域社会に新しい循環が生まれます。

国は今後も「ノウフクの日」や各地の協議会を通じて、認知度の向上やネットワークづくりを進めています。法律という確かな土台を背景に、農業と福祉が日常的に結びつく未来は、もう現実のものとなりつつあります。

まとめ

農福連携は、法律に裏付けられた社会の新しい仕組みです。
しかし本当に価値を持つのは、畑に立つ一人ひとりの笑顔や、地域で生まれる小さな変化です。

制度から日常へ。
農福連携は、暮らしの中で実感できる「共生社会」のかたちを描いています。